米国Veterans Affairs Epidemiologic Research and Information CenterのEdward J. Boyko氏

 米国軍人8万人弱に対する10年に及ぶ観察研究から、睡眠障害は2型糖尿病の独立したリスク因子であることが明らかになった。対象コホートには抑うつやPTSDなどの精神的な問題を抱える人も多いが、睡眠障害と糖尿病の相関は、そうした問題とは独立に認められたという。米Veterans Affairs Epidemiologic Research and Information CenterのEdward J. Boyko氏らが、12月4日から8日までドバイで開催された世界糖尿病会議(WDC2011)で報告した。

 Boyko氏らの研究は、米国陸軍軍人の精神的および身体的健康状態を追跡する大規模前向き観察研究であるMillennium Cohort Study(MCS)の一環として行われた。MCSは2001年に開始された米国陸軍史上最大の前向き観察研究であり、2022年までの最長21年間の追跡が予定されている。これまでの登録人数は15万人を超え、そのほぼ半数はイラクまたはアフガニスタンでの従軍経験者となっている。

 今回は、2001〜2003年に登録された第1期コホート7万7047人を対象に、睡眠の長さや質、睡眠時無呼吸症候群(SAS)などの睡眠異常と糖尿病発症との関連について、従軍歴や精神的健康状態を含めた他の交絡因子の関連とともに解析した。

 調査は、登録時と3年ごとに郵送または電子メールで送付する調査票に回答する自己申告形式で行われた。全7万7047人のうち、5万4790人(71%)が6年間のフォローアップを完了した。このうち、登録時に糖尿病を有すると報告した722人と、医療記録に1型糖尿病治療歴があった74人、睡眠および他の交絡因子に関する回答に欠落があった人を除外した5万3665人を解析の対象とした。

 6年間の追跡の結果、5万3665人のうち1053人が2型糖尿病を発症した。これらの人々(DM群)と糖尿病を発症しなかった5万2612人(非DM群)の登録時の背景因子には、年齢(40.3歳 対 34.4歳)、BMI(28.5kg/m2 対 26.0kg/m2)、人種(白人63.8% 対 71.5%など)、戦闘部隊への配備と実戦経験(実戦経験あり10.6% 対 22.7%など)に有意な差がみられた(すべてP<0.01)。

 DM群では非DM群に比べ、不眠(22.8% 対 14.6%)、入眠障害/中途覚醒(30.5% 対 22.2%)、SAS(7.2% 対 2.0%)の頻度が有意に高く、睡眠時間の分布にも有意な差が認められた(いずれもP<0.01)。

 さらにDM群では、大うつ病(4.7% 対 2.7%)、パニック障害(2.5% 対 1.0%)、不安障害(3.2% 対 1.7%)、PTSD(7.5% 対 3.6%)の頻度も有意に高かった(すべてP<0.01)。一方で、飲酒に問題のある人の割合は有意に低かった(38.0% 対 48.4%、P<0.01)。

 上記の睡眠関連因子と精神科的因子、糖尿病発症の関連は、人口統計学的因子やBMIについて補正後も有意だった(すべてP<0.01)。

 これらを説明変数とした多変量解析の結果、入眠障害/中途覚醒(OR:1.31、95%信頼区間:1.13-1.52、以下同)、SAS(1.70、1.31-2.20)、PTSD(1.45、1.11-1.89)、年齢(1.07、1.06-1.08)、BMI(1.19、1.17-1.21)、性別(女性)(1.23、1.04-1.45)、人種(黒人;1.45、1.22-1.72、白人/黒人以外;1.56、1.32-1.85、白人を1とした場合)の7つの因子が糖尿病発症の有意かつ独立した危険因子として同定された(性別のみP=0.02、他はすべてP<0.01)。

 以上の結果より、睡眠障害は2型糖尿病発症の独立したリスク因子であることが示された。また、睡眠障害と密接に関連するPTSDも2型糖尿病の独立したリスク因子であることが示されたことから、両者はそれぞれ異なった経路を介して糖尿病リスクの増加をもたらしていることが示唆された。

 本検討には、糖尿病発症というアウトカムが自己申告に基づくものであることや、睡眠時間や睡眠の質の客観評価がなされていないことなどの限界はあるが、多数例を対象とした長期前向き観察により、睡眠と糖尿病発症の関連を明らかにした功績は大きいと思われる。

(日経メディカル別冊編集)