オーストラリア・シドニー大学のJohn Chalmers氏

 ADVANCE試験のpost-hoc解析から、また新たな知見が示された。HbA1c低下による血管合併症抑制効果が認められるのは、細小血管障害については到達HbA1cが6.5%、大血管障害と死亡については到達HbA1cが7.0%までであり、これらの値よりHbA1cを下げても血管合併症リスクがさらに低くなることはないという。半面、それ以下にHbA1cを下げた場合でも、明確なリスク上昇は認められなかった。オーストラリア・シドニー大学のJohn Chalmers氏らが、12月4日から8日までドバイで開催された世界糖尿病会議(WDC2011)で報告した。

 ADVANCE試験は、ハイリスクな2型糖尿病患者を対象に、HbA1c<6.5%を目標とした厳格な血糖低下治療による血管合併症抑制効果を標準治療と比較した大規模臨床試験である。主解析の結果は2008年に発表され、大血管障害の予防効果は証明されなかったものの、細小血管障害は有意に抑制され、特に腎症の発症および悪化については21%もの抑制効果が確認された。

 今回Chalmers氏らは、治療後の到達HbA1cレベルの10分位で患者を分け、各分位層における大血管障害と細小血管障害、総死亡のハザード比(HR)を算出した。

 その結果、大血管障害と総死亡のHRは、到達HbA1cが7.0%以上では、到達HbA1cが低いほど低かった。また、細小血管障害のHRも同様に、到達HbA1cが6.5%以上であれば、到達HbA1cが低いほど低かった。到達HbA1cが1%上昇するごとに大血管障害と総死亡のリスクはそれぞれ38%、細小血管障害のリスクは40%上昇した。

 しかしながら、到達HbA1cが上記の値を下回る場合、大血管障害、細小血管障害、総死亡のいずれについても、到達HbA1cによるHRの低下は認められなかった。この事実は、HbA1c<6〜6.5%という到達目標を設定した他の大規模試験において、明確な心血管イベント抑制効果が認められなかったこととも符合する。

 この他に、厳格治療の効果を患者の居住国・地域別にみた解析や、腎障害に対する抑制効果をアルブミン尿や透析・腎移植といったハードエンドポイントで評価した解析などが今回新たに実施された。

 地域別の解析においては、主解析で示された厳格治療による血管合併症抑制効果に地域差は認められず、厳格な血糖降下療法は欧米人にもアジア人にも推奨できるものであることが確認された。

 また、腎障害については、厳格治療群で標準治療群に対し、微量アルブミン尿の発症が9%、顕性アルブミン尿の発症が30%抑制されていた(それぞれP=0.012、P=0.0004)ほか、末期腎障害(本研究では透析あるいは腎移植をESRDと定義)への移行が65%抑制されている(P=0.012)として、厳格な血糖降下療法がESRD予防の有力な手段になる可能性が示唆された。

 ただし、ESRDには透析・腎移植だけでなく、腎不全による死亡や血清クレアチニン値の倍化も含むのが一般的だ。本解析では腎不全死と血清クレアチニン値の倍化はそれぞれ独立した評価項目としており、これらについては有意な抑制効果は認められなかった。Chalmers氏はこの点について認めた上で、「腎不全による死なども含めたESRDに対する厳格な血糖降下療法の効果について、より大規模な集団で追跡することが必要だろう」と述べた。

(日経メディカル別冊編集)


【訂正】
・12月14日に以下の訂正を行いました。
 本文第4段落に、「大血管障害と総死亡のHRは、到達HbA1cが6.5%以上では、到達HbA1cが低いほど低かった。また、細小血管障害のHRも同様に、到達HbA1cが7.0%以上であれば、到達HbA1cが低いほど低かった」とありましたが、正しくは、「大血管障害と総死亡のHRは、到達HbA1cが7.0%以上では、到達HbA1cが低いほど低かった。また、細小血管障害のHRも同様に、到達HbA1cが6.5%以上であれば、到達HbA1cが低いほど低かった」でした。訂正します。