フィンランドTurku大学のTapani Ronnemaa氏

 蛋白尿を伴う2型糖尿病患者では、収縮期血圧が130mmHg未満で、総死亡リスクや心血管死リスクは、逆に増大することが分かった。これは、フィンランドTurku大学のTapani Ronnemaa氏らが、2型糖尿病患者約900人について行った前向き試験の結果明らかにしたもので、12月4日から8日までドバイで開催されていた世界糖尿病会議(WDC2011)で発表した。2型糖尿病で蛋白尿の認められる人について、収縮期血圧と、総死亡リスクや心血管死リスクについて行った長期試験は、これが初めてという。

 Ronnemaa氏らは、2型糖尿病で、試験開始時点で心血管疾患の認められない885人について、前向きに最大18年間追跡調査を行った。被験者の年齢は56〜59歳、糖尿病歴(平均)は約8年だった。被験者は、収縮期血圧値によって、130mmHg未満(129人)、130〜139mmHg(112人)、140〜159mmHg(327人)、160mmHg以上(317人)の4群に分けられた。さらに、早朝スポット尿検査で、蛋白尿が150mg/L以下と150mg/L超でも分類した。

 コックス比例ハザードモデルを用い、心血管疾患死と総死亡のリスクについて、蛋白尿の有無別に収縮期血圧値との関連を分析した。

 なお、年齢や性別、糖尿病歴、HbA1c、総コレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪、喫煙、アルコール摂取、BMI、居住地、運動量、拡張期血圧、糖尿病治療の種類別、推定糸球体濾過量については、補正を行った。

 追跡期間中の死亡は607人、うち心血管疾患死は395人だった。交絡因子を補正後、蛋白尿のある2型糖尿病患者で、収縮期血圧が130mmHg未満の群はそれ以外の群に比べ、総死亡リスク、心血管死リスクともに最も高く、130〜139mmHg群の約2倍、140〜160mmHg群の約1.6倍だった。具体的には、130mmHg未満群を基準にした補正後ハザード比は、130〜139mmHg群で総死亡0.52、心血管死0.43だった。140〜160mmHg群の補正後同ハザード比は、それぞれ0.61と0.61だった。なお、160mmHg以上群と130mmHg未満群では、両死亡リスクともに有意差はなかった。

 一方で、蛋白尿のない患者の場合、収縮期血圧が130mmHg未満群は、総死亡リスク、心血管死リスクともに、他の群より低いか同等だった。

 Ronnemaa氏は、「2型糖尿病で蛋白尿のある人については、収縮期血圧と総死亡リスクや心血管死リスクに“Uカーブ”が認められ、血圧コントロールのターゲットが変わってくる」と結論した。こうした現象の原因として同氏は、「蛋白尿のある人は、症状がなくても、アテローム性動脈硬化症がある場合が少なくない。その場合、血圧が低すぎるとアウトカムは増悪する」などと考察した。

(日経メディカル別冊編集)