米国MSD社のBarry J. Goldstein氏

 DPP-4阻害薬治療を受けている2型糖尿病患者心血管イベント発生率は、他の治療より低率であることが最近のメタ解析などによって明らかにされている。しかし、一口に「他の治療」といっても様々である。DPP-4阻害薬であるシタグリプチンとSU薬を比較した3つの無作為化比較試験(RCT:Randomized controlled trial)のプール解析の結果、SU薬群では患者100人・年当たり0.9件のイベントが認められたのに対し、シタグリプチン群ではイベント発生が認められなかった。米国MSD社のBarry J. Goldstein氏らが、12月4日からドバイで開催中の世界糖尿病会議(WDC2011)で報告した。

 Goldstein氏らは、SU薬とシタグリプチンを単剤で比較した1つのRCTと、メトホルミン併用下で両者を比較した2つのRCTの計3試験、2451人(シタグリプチン群1226人、SU薬群1225人)のデータを解析した。追跡期間はメトホルミン併用下の1試験が30週、他の2試験が104週であり、その間に発生した主要な心血管イベント(MACE:Major Adverse CV Event)の発生率を比較した。

 シタグリプチン群とSU薬群は、ベースライン時の年齢(56.4歳 対 56.3歳)や糖尿病罹病期間(5.0年 対 5.0年)、HbA1c(7.6% 対 7.6%)、心血管疾患の既往(12% 対 12%)など、主な背景因子については両群に有意な差はみられなかった。

 追跡期間内に発生したMACEは、シタグリプチン群が0件、SU薬群が11件で、100人・年当たりの発生件数はそれぞれ0件、0.9件。心血管疾患による死亡件数は、シタグリプチン群0件、SU薬群5件で、100人・年当たりの発生件数はそれぞれ0件、0.4件だった。

 このように、シタグリプチン治療下の2型糖尿病患者における心血管イベント発生率は、SU薬治療下の患者に比べて低率であることが示された。

 しかし、本検討が後付け解析であることや、追跡期間が短くイベント発生数が少数であったこと、MACEの定義が明確でないこと、患者の心血管リスクが考慮されていないことなど、いくつかの限界がある。また、両者の差が確かに存在するとしても、それがシタグリプチンの保護的な作用によるものか、あるいはSU薬の有害作用によるのかは分からない。

 この点についてGoldstein氏は、「シタグリプチンの心血管保護作用について、現在、プラセボ対照前向きRCT「TECOS」試験を進めている。2015年には結果が得られる見通しだ」と、同試験に期待を寄せた。

(日経メディカル別冊編集)