英国Manchester大学のMitra Tavokoli氏

 1型糖尿病歴50年以上の患者を対象にした各種の神経障害検査の検討結果から、角膜共焦点顕微鏡による検査は糖尿病性神経障害の重症度の評価に役立つ可能性が示唆された。12月4日にドバイで開幕した世界糖尿病会議(WDC2011)で、英国Manchester大学のMitra Tavokoli氏が発表した。

 50歳以上の1型糖尿病患者の中には、細小血管障害の発症がわずかであるがまだ発症していない患者がいる。こうした患者の特徴を解析することで、細小血管障害のリスク因子を同定できる可能性がある。そこで、Tavokoli氏らは、糖尿病性神経障害に着目し、1型糖尿病患者を対象に、神経障害の重症度でグループ分けして、下肢神経伝導検査、定量的感覚試験、角膜共焦点顕微鏡検査を実施し、その結果を比較検討した。

 中等度の神経障害が見られる1型糖尿病患者(中等度群)10人、重症(重症群)の10人、1型糖尿病歴50年以上の患者(50年以上群)24人について解析した。非糖尿病患者を対照とした。

 年齢は、コントロール群が53歳、中等度群が47歳、重症群が41歳、50年以上群が62歳だった。糖尿病罹病期間は中等度群26年、重症群23年、50年以上群55年。HbA1c値は、コントロール群5.8%、中等度群8.87%、重症群8.6%、50年以上群8.1%だった。

 神経障害スコアは、コントロール群が0.5、中等度群5.33、重症群7.7、50年以上群5.04だった。振動覚閾値はコントロール群9.25(V)、中等度群18.03、重症群31.34、50年以上群22.85だった。腓骨振幅はコントロール群5.65(μ/V)、中等度群2.37、重症群1.65、50年以上群1.49。腓骨運動神経伝達速度(PMNCV)はコントロール群50.05(m/s)、中等度群37.78、重症群35.18、50年以上群37.45。角膜神経線維密度はコントロール群36.75(no/mm2)、中等度群23.42、重症群13.72、50年以上群18.33だった。角膜神経線維長はコントロール群27.93(mm/mm2)、中等度群17.39、重症群10.51、50年以上群15.73だった。

 そして、1型糖尿病歴が50年以上の患者24人を、神経障害が重症なグループ(PMNCV<38)9人、中等度のグループ(PMNCV 38〜42)10人、神経障害がないグループ(PMNCV>42)5人に分け、検査結果を比較したところ、角膜神経線維密度が、コントロールグループ37.68、障害がないグループ28.74、中等度のグループ22.91、重症のグループ10.15と重症になるほど顕著に低下していた。また、角膜神経線維長も、コントロールグループ29.12、障害がないグループ24.69、中等度のグループ20.2、重症のグループ7.7と重症になるほど低下していた。

 なお、血糖値や血圧、脂質値は、神経障害の有無との関係は見いだされなかった。

 これらの結果からTavokoli氏は、神経障害がある患者とない患者の間では、角膜共焦点顕微鏡検査による角膜線維の形態の違いに、両者の差が最もよく現れていたと総括。今後、たんぱく質や代謝産物による解析を行い、発症に関与する因子の解析を進めたいと語った。

(日経メディカル別冊編集)