UEGWは10月30日の記者発表で、過敏性腸症候群(IBS;Irritable Bowel Syndrome)研究の現状を解説し、その中でイエーテボリ大学(スウェーデン)教授のMagnus Simren氏は、数年以内に機能性の消化管疾患に関する重大な知見が得られ、重症患者に対する治療につながるような成果が得られるのではないかという見通しを語った。

 IBSでは、消化管の器質的な異常が見つからないのに、差し込むような腹痛、重度の不快感、鼓腸、下痢または便秘(あるいは両方)を起こす。Simren氏によれば、欧州の成人は5人に1人がIBS患者だと考えられているという。原因は消化管そのものではなく、周囲を取り巻く神経系(食道から直腸までで約1億個の神経細胞が存在する)の異常がかかわっていると考えられている。これらのネットワークは、腹部にある脳に例えられ、コミュニーケーションにはセロトニン、ドパミン、ノルアドレナリン、グルタミン酸、オピエートなどの伝達物質が使われる。

 脳と消化管の神経系は迷走神経を介してつながっているため、われわれは怒ると胃が痛くなったり、ストレスにさらされると下痢を起こすような状況も経験するが、通常は消化管の神経系は脳から独立して働いていると考えられている。消化管の神経系で何かがうまくいかないとき、それ自体が注意を喚起するために痛みや吐き気を起こす。

 消化管の神経ネットワークを乱す原因として、現段階で最も有力なのはセロトニンだとSimren氏はいう。IBS患者を検査すると、そのときの状態によってセロトニン濃度が変化することが分かった。これが下痢や便秘など排便状態が変化したり、痛みの感受性が変化する1つの説明になると考えられている。

 IBSでは約40%の患者が不安症やうつ病を合併しうると考えられているため、抗うつ薬が使われることがあるが、治療の決め手はないのが現状だ。「セロトニンを中心として、消化管の神経伝達物質によるネットワークを研究することにより、新しい薬の開発も期待できる」とSimren氏は話している。