UEGWは10月29日、アルコール関連肝疾患は全ヨーロッパに広がっており、大量飲酒が公衆衛生上の脅威になりつつあるとする声明を発表した。

 欧州の14カ国が参加した最近の研究によると、男性ではエタノール換算で1週間に200〜360グラムの飲酒を長期にわたり続けると、肝硬変や肝癌のリスクが上昇することが示されたという。代謝の違いから女性ではアルコールの影響がさらに顕著になり、リスク上昇の閾値が100〜180グラムに下がる。なお、エタノール換算値は、ワイン1リットルで約80グラム、ビール1リットルで約40グラムになる。

フィレンツェ大学内科教授のMassimo Pinzani氏(写真;小又 理恵子)

 フィレンツェ大学内科教授のMassimo Pinzani氏(写真)は、飲酒量だけでなく飲み方の習慣も重要だと説明する。1週間の飲酒量が閾値を超えていなくても、短時間に大量のアルコールを摂取するのも問題で、例えば週末の大量飲酒は急性の肝障害を起こすことがあると話した。最近までこのような飲酒習慣は、主に北欧や中欧の寒い国に限られていると思われていたが、今や欧州全体の若者に広がっているとPinzani氏は指摘した。

 アルコール依存状態の飲酒が長期間にわたって続くと、最初は脂肪肝への変性から始まり、肝炎や肝硬変につながっていく。これらは腹部の浮腫や脳の疾患、食道静脈瘤からの出血なども起こす。最悪の場合は肝機能障害が代謝系全体を崩壊させ死に至る。しかしながら大量飲酒者が全員肝疾患を起こすわけではなく、肝硬変や肝癌に至る場合は、アルコールの有害性が発揮されるかどうかには遺伝的素因もかかわっているようだ。最近の研究では、インターロイキン-10の産生をコントロールするDNAの機能異常が、肝障害の発症にかかわっていることが明らかになった。

 リール大学医学部センター病院肝消化器病学教授のPhilippe Mathurin氏は、フランスの事情を説明した。フランスではこの10年間に、一人当たりのアルコール消費量が減り続けている。統計データからフランス人男性の平均飲酒量を1960年と99年で比較すると、エタノール換算で17.7リットルから10.7リットルに減っている。一人当たりで比較すると、ポルトガルは11リットル、ドイツは10.6リットル、アイルランドが11.6リットルなどとなっている。

 フランスで飲酒量が減ってきた主な原因は、ワインを飲む習慣が減ってきたからである。統計によると、1960年にはフランス人一人当たり年間126.1リットルのワインを飲んでいたが、99年には52.2リットルに減っていた。この間のビールの消費量はわずかしか変化がなく、99年で38.7リットルである。

 このように好ましい減少傾向はあるものの、フランスにおける肝硬変の一番の問題がアルコールであることに変わりはない。Mathurin氏は、1998年にフランスでは8863人がアルコールによる肝硬変で亡くなったことを指摘した。また、スピリッツ類の売り上げが1%上昇すると肝硬変の死亡率が0.082%上昇すると考えられる研究データを紹介した。

 エンドステージまで進んでしまった肝疾患の治療は、現在でも移植のほかにはない。アルコール性肝硬変で亡くなるリスクを抱えた患者のうち、肝移植を受けられるのは6%とする推計もある。肝移植が必要になる前の段階で食い止めるには、大量飲酒の習慣を改めることが最も有効であることは間違いない。UEGWとしても問題提起することが重要だと考え、欧州各国のプレス関係者に訴えることにしたとPinzani氏は語った。