マイクロサテライト不安定性(MSI)シグネチャー(MSI-Print)とColoPrintを併用することで、個別化治療に向け、II期の大腸癌で術後補助療法を追加する必要がない患者を同定できる可能性が示された。6月27日から30日までバルセロナで開催された第14回世界消化器癌学会(WCGC2012)で、スペインIDEBELL Institute Catala d’ Oncologia, L’Hospitalet de LlobregatのRamon Salazar氏が発表した。

 II期の大腸癌患者で術後補助療法が推奨されるのは、T4などの高リスクの患者であり、リスクが不明瞭な患者の多くは取り残される。II期の患者では化学療法の有用性が得られる患者と治療が不要な患者を同定する必要がある。またIII期では全例に術後補助療法が推奨されるが、良好な転帰が示されているのはIIIA期の患者である。

 Salazar氏らは、分子レベルでの危険因子、すなわち遺伝子の発現プロファイルを用いるColoprintとMSIを用いて、MSIとColoPrintのプール解析を行い、MSI-Printを導入した。プール解析のデータは3件の臨床試験から入手した。各試験の対象は、I期からIII期が206人、II期がそれぞれ135人と76人だった。

 その結果、ColoPrintでは、再発・転移が発生したII期の患者320人とIIIA期の患者16人の65%が低リスクに分類された。3年の無再発生存率(RFS)は、低リスクの患者で92%、高リスクの患者で77%となった(p=0.001)。3年以内の再発は、高リスクの患者で5人に1人、低リスクの患者で13人に1人となった。
 
 ColoPrintと臨床因子を併用し、II期の患者320人の再発リスクが算出された。ColoPrintで低リスクの患者では、臨床因子が低リスクの場合は5%、高リスクの場合は13%だった。一方、ColoPrintで高リスクの患者では、臨床因子が低リスクの場合は18%、高リスクの場合は28%に上昇した。ハザード比はColoPrintで低リスクの患者でそれぞれ1.00と2.79、高リスクの患者でそれぞれ3.82と6.68となった。
 
 さらにColoPrintでは、IIIA期の低リスクの患者も同定できる可能性が示された。IIIA期の患者は16人のみだったが、低リスクと高リスクの患者のRFSのハザード比は3.8となった(p=0.08)。

 II期とIIIA期の患者の3年RFSについて、ColoPrint(高リスクvs低リスク)、MSI、2012年のNCCNガイドラインの臨床病理学的パラメータの単変量解析を行うと、ColoPrintのみがハザード比2.92で有意な予後予測因子として抽出された(p=0.0001)。

 一方、MSIと臨床因子の併用では、リスク群の分類は可能だったが、確定できない患者も多く残された。MSIが高い(MSI-H)患者のRFSは18%にとどまった。

 ColoPrintでは、臨床リスクでは確定できない患者でもリスク群の分類が可能と考えられた。T3でマイクロサテライト安定性(MSS)の患者232人について、ColoPrint、臨床病理学的パラメータの単変量解析を行うと、ColoPrintのみがハザード比2.73で有意な予後予測因子として抽出された(p=0.01)。3年RFSは、高リスクの患者で79.9%、低リスクの患者で92.2%となった。

 Salazar氏らは、MSI表現型を有する患者を同定するため、64遺伝子シグネチャー(MSI-Print)の開発を行っている。この方法について、132人の凍結検体で検証すると、MSI-Printの感度は90.3%、特異度は83.2%(AUC 0.942となり)、さらに625人のホルマリン固定・パラフィン包埋(FFPE)検体で検証すると、感度は94.3%、特異度は90.1%(AUC 0.965)と高い値だった。さらにMSI-Printでは、標準の方法では同定されなかったMSI-likeの表現型も同定できる。

 II期の患者263人で術後遠隔転移するまでの期間(DMFS)を比較すると、マイクロサテライト安定性(MSS)の患者よりも、MSI-HとMSI-likeの患者で良好であることが示された(それぞれp=0.0145、p=0.0103)。

 現在、ColoPrintとMSI-Printを組み合わせたリスク層別化を前向きに評価するPARSC試験が進行中である。この試験ではII期の患者575人の登録を目標とし、2012年6月の時点で36施設が参加、II期の患者392人、III期の患者335人が登録している。最終の患者登録は今年12月になる見込みである。