ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ(DPD)活性の欠損により重度の毒性が発現するリスクの評価が11000人を超える患者に行われ、「ODPM Tox」を用いて複数パラメータのリスク計算を行うことにより、毒性に関連する死亡を100%、重度の毒性を98%回避できる可能性が示された。6月27日から30日までバルセロナで開催された第14回世界消化器癌学会(WCGC2012)で、フランスInstitut de Cancerologie de l’Ouest Paul PapinのBoisdron Michele-Celle氏が発表した。

 フッ化ピリミジン系薬剤を用いる化学療法では、治療の1サイクル目に重度で致死的な毒性が発現する場合があり、DPD活性の欠損と関連することが指摘されている。

 Michele-Celle氏らは、DPD活性の欠損を有効にスクリーニングする方法を検討し、重度の毒性が発現するリスクを評価している。
 
 2001年4月から2011年12月の間に、11351人に対し、重度の毒性が発現するリスクのスクリーニングが行われた。このうち11104人は治療開始前の患者、247人はグレード4の毒性が発現、または死亡した後の患者だった。
 
 毒性のリスクの評価には、ジェノタイピングとフェノタイピングを組み合わせた。ジェノタイピングでは、パイロシークエンス法を用いて有害なDPYD遺伝子変異を検出し、フェノタイピングではウラシルとデヒドロウラシルを定量し、UH2/Uの比を求めた。これらの結果と、生理学的パラメータ、生理病理学的パラメータを合わせた複数パラメータのリスク計算を「ODPM Tox」で行い、治療前のスクリーニングでリスクがあると考えられた患者には「ODPM Protocol」を用いて個別に投与量を調節した。
 
 全対象の11351人において、1個以上の変異を有する患者は3%で、最も多く認められた変異は2846 A>Tで1.6%だった。
 
 治療開始前の患者11104人では、80%を超える患者が5FUで治療した消化器癌の患者だった。11104人において、1個以上の変異を有する患者は2.4%で、全対象と同様の割合だった。最も多く認められた変異は2846 A>Tで1.3%だった。DPYD2Aのホモ接合体、二重変異体を有する患者が1人ずつ含まれていたが、治療前のスクリーニングにより、5FUに関連するグレード4の毒性または死亡に至る毒性を発現した患者はいなかった。Michele-Celle氏は「治療前のスクリーニングで患者の命が救われた」と話した。
 
 毒性が発現した後の患者247人では、1個以上の変異を有している患者は33%で、多く認められた変異は2846A>T(29.6%)とDPYD2A(26%)だった。89%にグレード4の毒性(下痢、発熱性の好中球減少、昏睡、多臓器毒性)が発現した。DPD活性の欠損を認めた患者は85%、複数パラメータのリスク計算では98%となった。
 
 247人中27人(11%)が死亡し、患者には5FU、カペシタビン、テガフールが投与されていた。死亡した患者の59%が1個以上の変異を有していた。DPD活性の欠損を認めた患者は89%、ODPM Toxによる複数パラメータのリスク計算では100%となった。
 
 Michele-Celle氏は「ジェノタイピングまたはフェノタイピングだけでは、早期に発現する毒性の十分な予測因子にはならない」と話した。現在、同氏らはこの方法で年間2000人の患者をスクリーニングしており、累積では14000人を超えるという。臨床で行う場合は治療開始10日前に血液検体を採取し、8日間で結果が得られる。費用は180ユーロ(約18180円)かかる。
 
 Michele-Celle氏は「DPD活性の欠損を認める患者でも、薬物動態のモニタリングとODPM Protocolを用いた適切な用量調整を行えば治療は可能と考えられる」と結論した。