転移を有する膵癌患者では、ゲムシタビンと併用するエルロチニブを標準用量の100mg/日で投与する場合と比較して、150mg/日から250mg/日まで増量する場合、有効性との相関が示唆されているグレード2以上の発疹の発現率は高くなるものの有効性の改善は得られず、増量は推奨されないことがフェーズ2試験のRACHEL(BO21128)試験から示された。6月27日から30日までバルセロナで開催されている第14回世界消化器癌学会(WCGC2012)で、ベルギーUniversity Hospital GasthuisbergのEric Van Cutsem氏が発表した。

 エルロチニブの投与に関連して発現する発疹と全生存期間(OS)の相関が報告されており、膵癌のフェーズ3試験では、グレード0または1の発疹と比較してグレード2以上の発疹が発現した患者で有意な延長が示されている。

 RACHEL(BO21128)試験は、非盲検、多施設共同の用量漸増試験。転移を有する膵腺癌患者を対象として、エルロチニブの増量が発疹を誘発し、生存に影響を与えるか否かをプロスペクティブに評価した。対象は、全身治療の治療歴がなく、PSは 0または1であることとした。
 
 導入期間は4週間とし、ゲムシタビン1000mg/m2を週1回、エルロチニブ100mg/日を投与した。
 
 グレード1以下の発疹が発現し、適格と判断された患者は、4週間を1サイクルとしてゲムシタビン1000mg/m2(1、8、15日目)とエルロチニブ100mg/日を投与する群(標準用量群)と、ゲムシタビンは同量でエルロチニブを漸増(開始用量150mg/日、2週毎に50mgずつ増量し最大250mg/日まで、グレード2の発疹またはその他の強い毒性の発現まで)する群(漸増群)のいずれかに、無作為に割り付けた。無作為化割付けを行った患者における主要評価項目はOSだった。

 登録された467人中、146人を適格と判断し、標準用量群に75人、漸増群に71人を無作為に割付けた。36人は脱落、179人は発疹がグレード1以下だったが不適格、106人はグレード2以上の発疹で無作為化割付けには進めなかった。これらの患者には標準群と同量で投与を継続した。

 漸増群では、71人中70人がエルロチニブ150mg/日の投与を受け、そのうち49人で200mg/日、28人で250mg/日に増量し、300mg/日に増量した患者も1人含まれた。
 
 標準用量群と漸増群において、年齢中央値はそれぞれ63歳と65歳、男性の割合は45%と51%、PSが0の患者の割合は52%と41%で、その他の患者背景は同様だった。
 
 結果として、グレード2以上の発疹の発現率は、標準用量群9.3%、漸増群41.4%となり、32.1%(95%信頼区間:18.0-46.2)の差がみられた(p<0.0001)。

 OS中央値は標準用量群8.4カ月、漸増群7.0カ月で、ハザード比は1.26(95%信頼区間:0.88-1.80)となり、有意差は認められなかった(p=0.2026)。OSについては、標準用量群と無作為化に進めなかった患者との比較、漸増群と無作為化に進めなかった患者との比較でも、差はみられなかった。

 
 PFS、奏効率もOSの結果と一致するものだった。PFS中央値は標準用量群19.4カ月、漸増群15.3カ月、ハザード比は1.09(95%信頼区間:0.77-1.54)となった(p=0.6298)。奏効率は、標準用量群で完全奏効(CR)0%、部分奏効(PR)14.7%、漸増群でCR1.4%、PR7.1%だった。病勢コントロール率(DCR)は標準用量群62.7%、漸増群47.1%で、DCRの差は15.52%となり、標準用量群で高い傾向がみられた(p=0.0603)。

 
 全グレードの有害事象は標準用量群の96.1%、漸増群の100%に発現し、そのうち重篤な有害事象はそれぞれ31.2%と28.2%だった。治療に関連する有害事象は標準用量群87%、漸増群100%に発現し、そのうち重篤な有害事象は13.0%と9.9%だった。

 ゲムシタビンの蓄積投与量の中央値を比較すると、標準用量群とグレード2以上の発疹が発現した患者よりも、漸増群で少なかった。

 Custem氏は今回の結果から、「転移を有する膵癌患者にゲムシタビンとの併用でエルロチニブを投与する場合、承認された用量を超える増量は推奨されない」と結論した。