切除不能な肝細胞癌(HCC)患者に対する放射線塞栓療法(radioembolisation)は安全で肝硬変合併例でも忍容性が高く、全生存期間(OS)に寄与する可能性があることが、レトロスペクティブな解析から示された。6月22日から25日までスペイン・バルセロナで開催された第13回世界消化器癌学会(WCGC2011)で、スペインClinica Universitaria de NavarraのBruno Sangro氏が発表した。

 放射線塞栓療法は、肝動脈化学塞栓療法(TACE)と同様にカテーテルを用いて、イットリウム90で標識した直径30〜35μのレジン製またはガラス製の微小球を腫瘍の栄養動脈に注入する方法。血液供給を遮断するとともに、半減期が64.2時間のβ線放射体として腫瘍細胞を死滅させることを目的とする。欧州などで切除不能なHCCに対して行われている。

 Sangro氏らは、西洋人患者についての多施設の臨床経験をレトロスペクティブに解析し、放射線塞栓療法の安全性と全生存期間(OS)を検討した。

 解析の対象は、2003年9月から2009年12月までに、欧州の8施設でこの治療を受けた患者325人(年齢中央値64.5歳、範囲 22〜87歳、男性81.5%)。肝硬変合併例が78.5%を占めた。前治療として、肝切除または肝移植を受けた患者は61人、ラジオ波熱凝固療法(RFA)または経皮的エタノール注入療法(PEI)を受けた患者は29人、肝動脈塞栓療法(TAE)またはTACEを受けた患者は98人だった(治療の重複例を含む)。

 ベースラインの患者の特性として、多結節性(>5個)が38.6%、両葉性が53.1%、肝外病変が9.2%、門脈閉塞(PVO)が23.3%、AFP>400ng/mLgが34.9%、ECOG PS>0が45.6%、Child-Pugh分類のAが82.5%だった。Barcelona Clinic Liver Cancer(BCLC)のステージC(advanced stage)の患者は56.3%に上った。

 投与した放射能の中央値は1.6GBqで、標的部位は、全肝が45.2%、葉が47.4%、区域が7.4%だった。治療回数は1回が93.2%を占めた。

 本治療に関連する有害事象は、全グレードでは疲労感が最も多く54.5%に発現したが、グレード2は5.2%、グレード3は2.5%だった。嘔気と嘔吐ではそれぞれ32.0%、4.3%、0.3%、腹痛では27.1%、4.0%、1.5%だった。発熱では12.3%、1.2%、0%だった。

 検査値の異常では、ビリルビン値のグレード3以上の異常は、治療前は0%、治療3カ月後は5.8%となった(p<0.001)。BCLCのステージや治療の標的部位による違いはみられなかった。アルブミン値、INR、ALT、クレアチニン、血小板数のグレード3以上の異常は治療3カ月後に増加したものの、いずれも有意差はなかった。

 全生存期間(OS)の中央値は12.8カ月(95%信頼区間 10.9〜15.7)だった。1年OSは52.8%、2年OSは28.1%、3年OSは15.9%となった。ベースラインのBCLCのステージによるOSは、Aは24.4カ月、Bは16.9カ月、Cは10.0カ月、Dは5.2カ月だった(p<0.001)。

 多変量解析では、多結節性(>5)、ECOG PS、肝外病変、INR>1.2が、放射線塞栓療法施行後の生存の独立した予後予測因子であることが示された。

 Sangro氏は「本治療法は生存期間に対しても有望で、特に局所療法以外の方法が考えられない患者に有効と考えられる」と話した。