マルチキナーゼ阻害剤ソラフェニブの治療を受けた進行肝細胞癌患者において、細胞増殖シグナル伝達系で重要な役割を果たすpERK(リン酸化細胞外シグナル調節キナーゼ)とVEGFR (血管内皮細胞増殖因子受容体)-2の高発現が予後不良を予測する因子であることが、2つの無作為化臨床試験に参加した患者を対象とした解析で明らかになった。6月22日から25日までスペイン・バルセロナで開催された第13回世界消化器癌学会(WCGC2011)で、イタリアAzienda Ospedaliero-UniversitariaのFrancesca V.Negri氏らが発表した。

 解析は、治療歴のない肝細胞癌患者に対して、2005年から2008年にソラフェニブ治療を行った2つの無作為化臨床試験の患者77人を対象に実施された。男性が82%、年齢中央値は70歳、BCLC Cが42%、Child-Pugh B-Cが16%だった。患者にはソラフェニブ400mgが1日2回、病勢進行まで投与された。一方、対照群の肝細胞癌患者56人にはbest supportive careが行われた。

 抗腫瘍効果をRECIST基準で6〜8週ごとに評価した結果、7人(9%)で抗腫瘍効果が認められ、41人(53%)は病勢安定と判定された。PFS中央値は3.8カ月、OS中央値は6.4カ月だった。

 すべての患者から得られた組織標本を用いて、βカテニン、グルタミン合成酵素、pERK、リン酸化AKT (v-akt murine thymoma viral oncogene homolog;pAKT)、VEGFR-2の発現を評価し、発現量と無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)の関連性を調べた。

 単変量解析の結果、PFSに関し、pERK高発現のpERK低発現に対するハザード比は2.15、p=0.010、OSに関してのハザード比は2.23、p=0.005で、PFSとOSの低下はpERK高発現が関連していることが示された。同様に、VEGFR-2高発現のVEGFR-2低発現に対するハザード比はPFSでは1.97、p=0.039、OSではハザード比が2.65、p=0.004と有意な関連性が見られた。

 多変量解析では、OS に関し、pERK高発現のpERK低発現に対するハザード比は2.09、p=0.019、VEGFR-2高発現のVEGFR-2低発現に対するハザード比は2.28、p=0.021で、pERK高発現とVEGFR-2高発現がOSの独立した因子であった。PFSにおいてはpERK高発現のみが有意に関与しており、ハザード比は2.13、p=0.014だった。また臨床的な変数ではECOG PSがPFSとOSに有意に関連していた。

 これらのことから、ソラフェニブ治療を受ける進行肝細胞癌患者において、pERKとVEGFR-2の高発現がPFSとOSの低下を予測する因子であることが示された。また対照群ではpERKとVEGFR-2は予後に影響しなかったことから、「ソラフェニブの効果を予測するバイオマーカーである可能性もある」としている。