抗HER2療法の革新により、HER2陽性乳癌で脳転移を有する患者の生存期間は、サブタイプがHER2-enrichの場合に大きく改善することが、日本人患者を対象とした単施設の検討から示された。長期生存者の中には12年以上生存した症例も含まれる。12月10日から14日まで米国サンアントニオで開催されたサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS2013)で、がん・感染症センター都立駒込病院外科(乳腺)の本田弥生氏が発表した。

 脳転移は乳癌患者の10-15%に発生する。脳転移は全身療法に抵抗性である場合が多く、予後不良と相関するが、最近では治療法の革新により、脳転移の診断後の生存期間の延長が報告されている。

 本田氏らは、乳癌患者で脳転移を有する長期生存者の臨床病理学的な特性を解析することを目的として、検討を行った。

 対象は、2000年から2010年までに、同院で脳転移と診断された乳癌患者63人だった。この解析では、長期生存群は脳転移の診断から36カ月以上生存している患者、短期生存群は生存期間が36カ月未満の患者と定義した。臨床病理学的な特性を2群間で比較した。脳転移を有する患者の生存率と予後因子をKaplan-Meier法で解析し、Log-Rank検定を行った。多変量解析はCox比例ハザードモデルで行った。

 63人の年齢中央値は53歳(範囲:35-78)、追跡期間中央値は41.6カ月だった。原発腫瘍のサブタイプは、ER陽性/HER2陰性(Luminal)が18人(28.5%)、ER陰性または陽性/HER2陽性(HER2-enrich)が27人(43%)、ER陰性/HER2陰性(Basal)が18人(28.5%)だった。脳転移後の生存期間中央値は12カ月で、36人(86%)は脳転移に関連する死亡、8人(14%)は脳転移に関連しない死亡だった。

 63人中、脳転移後に36カ月以上生存した長期生存群は11人だった。原発腫瘍のER陽性と陰性の割合は、長期生存群で55%と45%、短期生存群で38%と62%で、両群間に有意差はなかった(p=0.358)。一方、HER2陽性と陰性の割合は、長期生存群で73%と27%、短期生存群で17%と83%となり、長期生存群で有意にHER2陽性率が高かった(p=0.001)。

 長期生存群の11人には、脳転移後に167カ月生存した患者や、現在144カ月生存中の患者が含まれた。2人とも原発腫瘍はER陰性、HER2陽性だった。144カ月生存中の患者には、脳転移に対する治療として、手術、右脳への照射(RBRT)、定位手術的照射(SRS)が行われ、脳転移後の全身療法として、トラスツズマブとパクリタキセルを投与した後、トラスツズマブ単剤療法のみを長期継続しており、通常の生活がおくれているという。

 脳転移後の生存期間中央値をサブタイプ別にみると、Luminalでは11カ月、HER2-enrichが37カ月、Basalが3カ月となった。LuminalとHER2-enrichの間に有意差はなかったが(p=0.188)、HER2-enrichで延長傾向を認めた。Basalの予後は不良で、HER2-enrichとの間に有意差を認めた(p<0.001)。

 単変量解析では、Karnofsky performance status(KPS)(70%以上と70%未満)、HER2の状態(陽性と陰性)、最初の診断から初回再発までの期間(DFI)(24カ月以上と24カ月未満)が、脳転移後の生存期間に影響していた(それぞれp=0.0458、p=0.0398、p=0.0385)。髄膜炎の有無は境界線上だった(p=0.0552).

 さらに多変量解析を行うと、KPS(リスク比2.078[95%信頼区間:1.082-4.067])、HER2の状態(リスク比2.911[1.396-6.484])、DFI(リスク比2.552[95%信頼区間:1.240-5.414])が有意な予後因子となった(それぞれp=0.028、p=0.039、p=0.011)。

 乳癌特異的なGraded Prognostic Assessment(GPA)により、年齢、KPS、サブタイプは重要な予後因子であることが知られている。同様に、本検討においても、KPSとHER2は乳癌の脳転移の予後因子であることが示された。

 今回の結果から、本田氏は「抗HER2療法の革新により、HER2陽性乳癌で脳転移を有する患者の生存期間が大きく改善することが示唆された」と結論した。