全身化学療法未治療のステージIVの新規乳癌患者において、診断時生検標本と遠隔転移巣標本で遺伝子変異の違いを検討した結果、不均一性が見られたほか、転移巣では上皮間葉転換(EMT)関連遺伝子の変異が確認された。また、転移巣で見られたdriver変異は、1回の診断時原発巣生検では十分に検出されないことが示唆された。米国Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのFrancois-Clement Bidard氏らが、米国サンアントニオで12月11日から14日まで開催されたサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS2013)で発表した。

 Bidard氏らは、(1)単一の診断用生検標本における遺伝子変異が転移巣の性質を示すものであるかを調べること、(2)原発巣を構成するクローン細胞を探索すること―の2つを目的に、未治療のステージIV新規乳癌患者6人の診断時原発巣生検標本と遠隔転移巣標本をもとに全エクソームシーケンスを実施した。

 乳癌のサブグループ分類は、エストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性が2例、HER2陽性が2例、トリプルネガティブ乳癌が2例だった。

 まず(1)の単一の診断用生検標本における遺伝子変異が転移巣の性質を示すものであるかを調べるため、原発巣と転移巣における変異遺伝子を比較した。

 その結果、TP53(5例)、PIK3CA(1例)はいずれも原発巣と転移巣ともに変異が確認された。ほかの遺伝子変異については原発巣、転移巣ともに変異が重複しているもの、重複していないものが存在した。

 さらに、変異遺伝子の役割に応じて、「driver」、癌細胞の増殖や転移において限られた役割を果たす「potential driver」、その性質が報告されていない「Indeterminate」の3つに分類した。その結果、全ての患者において転移巣のみに存在する変異が確認された(1-10個)。原発巣と転移巣両方に存在する変異は1-32個、原発巣のみに存在する変異は0-5個だった。

 原発巣ではなかったが転移巣のみでdriver変異が確認された患者は、ER陽性患者、HER2陽性患者、トリプルネガティブ乳癌で1人ずつだった。具体的には、ER陽性患者ではTCF7L2 S122*変異、HER2陽性患者ではSMAD4 D355G変異、トリプルネガティブ乳癌ではKRIT1 W464*変異がそれぞれ1個ずつ検出された。

 これらの結果から、診断のために採取した原発巣の生検標本は転移巣の性質を全て示していないが、変異の多くは共通し、1回の原発巣生検だけでは検出できなかったことが推測された。

 次に、(2)未治療のステージIVの新規乳癌患者において、原発巣と同時性転移巣を構成するクローン細胞を探索した。

 その結果、クローン細胞もしくはサブクローン細胞の変異はそれぞれ原発巣、転移巣のいずれかのみに存在するものと両方に存在するものが確認された。例えばある腫瘍では、原発巣と転移巣でそれぞれ2つのクローン細胞集団が存在し(SEPT9とTAF1、SMAD4とWDR5)、共通するものは1つのdriver変異(TP53)のみだった。またある細胞では、転移巣において単一クローン細胞集団が、原発巣では多クローン細胞集団が見られた。IRF4(多クローン1%未満、単一クローン97%超)、MLL5(それぞれ25%、97%超)、BRCA2(75%超、97%超)、PIK3CA、JAK3、RAD21、SCAI(97%超、97%超)だった。

 これらの結果から、「原発巣、転移巣ともに不均一性が見られた。全身化学療法未治療の転移巣では、原発巣では検出されなかったSMAD4やTCF7L2などのEMT関連遺伝子の変異が確認された。臨床的には術後補助化学療法後の選択がなかったとしても、転移巣で見られた(potential)driver変異は、1回の診断時原発巣生検では十分に検出されなかった」とまとめた。