Veliparib/カルボプラチンが、トリプルネガティブ乳癌に対して有効である可能性が、ベイズ更新(統計学的手法)を用いた“Adaptive Randomization”により行われた多施設共同フェーズ2スクリーニング試験I-SPYで示され、同試験を“卒業”してフェーズ3試験へと進められることが明らかになった。12月10日から14日まで米国サンアントニオで開催されたSan Antonio Breast Cancer Symposium(SABCS)において、米University of California San Francisco Helen Diller Family Comprehensive Cancer CenterのHope S. Rugo氏が発表した。

 I-SPY2は、新薬の臨床応用を迅速かつ費用効率よく進めるために、米国立衛生研究所(NIH)とそのバイオマーカーコンソーシアムにより立ち上げられた新たなタイプの乳癌臨床試験。高リスクステージII/III乳癌を、バイオマーカーで特定のシグナチャーを有するサブタイプに分類し、一連の新薬候補+標準的なネオアジュバント療法または標準ネオアジュバント療法に無作為に割り付ける。pCRをエンドポイントとして、その結果を常にフィードバックし、新たに登録される患者は、この情報に基づいて、一連の新薬+標準療法のうち、より効果があると思われる新薬候補群と標準療法との間で無作為割付される(“Adaptive Randomization”)。

 I-SPY2独自のアルゴリズムに従い、pCR率の分布から、新薬を含むレジメンが、60-120例の登録数で「特定のシグナチャーを有する患者群を対象とする300人規模のフェーズ3試験において、85%以上の確率で優位性を示せる」と推定された場合、その新薬は“卒業”とし、その特定のシグナチャーを有する患者群を対象とするフェーズ3へと進む。I-SPY2では7種の新薬候補について試験が進められてきたが、そのひとつである経口PARP阻害剤Veliparibが、初の「卒業」となった。今回がI-SPY2の第1回報告である。

 登録基準は腫瘍径が臨床検査で2.5cm以上、画像で2cm以上、トリプルネガティブ、HER2+またはMammaPrint高リスクで、MRI実施可能であること。ホルモン受容体(HR)、HER2の状態とMammaPrintのリスクスコア(中央値を閾値として高リスク[MP Hi-1]または超高リスク[MP Hi-2])によってサブタイプに分類した。Veliparib+カルボプラチンはHER2陰性患者のみを適格としたため、候補シグナチャーは、すべてのHER2陰性(All HER2−)またはHR+/HER2−、HR−/HER2−トリプルネガティブ:TN)のいずれになる。

 72例がVeliparib+カルボプラチン群に割付けられ71例が評価可能だった。その時点でHER2−の62例が対照群となる標準療法に割り付けられていた。

 推定pCR値は、pCR分布の平均値とした。All HER2−シグナチャーのVeliparib+カルボプラチン群では33%(95%信頼区間:22-44)、対照群22%(95%信頼区間:0-35)、Veliparib+カルボプラチン群が優位である確率は92%、フェーズ3成功の確率は55%だった。HR+/HER−シグナチャーでは、Veliparib+カルボプラチン群の推定pCRは14%(95%信頼区間:4-27)、対照群19%(95%信頼区間:6-35)で、Veliparib+カルボプラチン群が優位である確率は28%、試験成功の確率は9%。TNシグナチャーでは、Veliparib+カルボプラチン群の推定pCR52%(95%信頼区間:35-69)、対照群26%(95%信頼区間:11-40)で、Veliparib+カルボプラチン群が優位である確率が99%、試験成功の確率が90%で「卒業」となった。

 Adaptive Randomizationの手法を用いることで、特定の乳癌サブタイプに対して効果的な薬剤の同定がより迅速に進み、患者にとっては効果の得られる可能性が高い治療群に割り付けられる(効果の得られない可能性の高い治療群には割り付けられない)ため、より倫理的な臨床試験の実施が可能となる。迅速性に加えて、従来3000-5000例規模のフェーズ3試験を300例で実施できるようになれば、医療経済的にも望ましい。pCRを代理マーカーとすることには異論もあるが、FDAもこの手法に基づくフェーズ3実施を支持しているという。Veliparib+カルボプラチンがフェーズ3で実際に臨床アウトカムにおいて優位性を示せるかどうかが注目される。