アジュバント療法でトラスツズマブを投与されたHER2陽性早期乳癌患者では、中枢神経系(CNS)への転移のリスク上昇が観察されているが、追跡期間の延長にともないリスクは低下することが、3つの大規模臨床試験の文献ベースでのメタ解析で示され、薬剤そのものがCNS転移の原因ではないことが示唆された。12月10日から14日まで米国サンアントニオで開催されたSan Antonio Breast Cancer Symposium(SABCS)において、University of Pittsburgh Cancer InstituteのAju Mathew氏が発表した。

 HER2陽性初期乳癌に対するトラスツズマブのアジュバント療法のランダム化試験において、中枢神経系(CNS)での再発リスク上昇が観察されている。

 合計6752例の患者を含む3試験のメタ解析で、追跡期間中央値2年において、最初の無病生存(DFS)イベントとしてのCNS転移リスクは、トラスツズマブ群で82%増加していた。

 Mathew氏らは、トラスツズマブ自体がCNS疾患を起こしやすくするわけではなく、血液脳関門バリアを通過しないことと、他の臓器部位における疾患コントロールが優れているために、相対的に最初の再発部位として、CNSへの転移リスクが高くなると考えた。したがって追跡期間が延びるほど、相対リスクは小さくなると仮説し、アジュバント療法としてトラスツズマブが用いられている3つの大規模臨床試験の最新の成績のCNS転移イベントを抽出してメタ解析した。

 対象とした試験は、4サイクルのAC-Tレジメンにトラスツズマブを1年間併用したNSABP B-31、NCCTG N9831と、トラスツズマブ1〜2年投与と観察を比較した HERA。計7456例が解析され、追跡期間中央値4年において、対照群では68例(HERA:32、NCCTG N9831:19、NSABP B-31:17)、トラスツズマブを投与された患者では98例(HERA:37、NCCTG N9831:29、NSABP B-31:32)において、CNSに無病生存(DFS)イベントが生じていた。

 CNS再発が最初のDFSイベントとなるリスクはトラスツズマブを投与された患者で43%高かった(RR=1.43、95%信頼区間:1.06-1.95)。試験別では、HERAではRR1.15(95%信頼区間:0.72-1.84)、NCCTG N9831はRR1.15(95%信頼区間:0.72-1.84)、NSABP B-31はRR1.87(95%信頼区間:1.04-3.34)。

 Mathew氏らは、トラスツズマブを投与された患者群では、DFSイベントとしてのCNS転移のリスクは、長期の追跡期間を経ても高かったが、リスク増加が82%から43%に低下しており、薬剤そのものがCNSを起こしやすくするわけではないとした。その上で、「CNS転移が相対的に多いことは事実であり、トラスツズマブを投与した患者では、症状によく注意すべきだろう。また今後、HER2標的治療の試験を行う場合、CNSが最初のDSFイベントになりうる可能性を検討するとともに、CNS転移のメカニズムを明らかにすべく、注意深くすべてのCNSイベントを記録するべきだ」との見解を示した。