トラスツズマブを上乗せした術前化学療法(NAC)を施行したHER2陽性原発乳癌患者において、エストロゲン受容体(ER)/プロゲステロン受容体(PgR)陰性患者の病理学的完全奏効(pCR)率はER/PgR陽性者よりも高かった。一方、3年無病生存(DFS)はER/PgRの発現状態に関わらず、両群間に有意差はなかった。多施設共同後ろ向き観察研究JBCRG-C03試験の結果について、京都大学医学部附属病院乳腺外科の高田正泰氏らが、米国サンアントニオで12月11日から14日まで開催されたサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS2013)で発表した。

 術前化学療法(NAC)へのトラスツズマブの上乗せは、HER2陽性乳癌患者のpCR率を改善した。近年の臨床試験では、NACへのトラスツズマブの上乗せは予後を改善したことが示されているが、予後を予測する臨床病理学的因子については十分に検討されていない。

 そこで高田氏らは、トラスツズマブを上乗せしたNAC後の生存について調べたほか、pCRや生存に関する予後予測因子を探索するため、多施設共同後ろ向き観察研究を実施した。

 対象は、2001年から2010年までにトラスツズマブを上乗せしたNACを実施したHER2陽性の原発乳癌患者733人。HER2陽性は、免疫染色で3+もしくはFISH法で2倍以上の増幅が見られた場合とした。ERとPgRの発現状態をもとに、ER/PgR陰性(HR陰性データセット、425人)とER/PgR陽性(HR陽性データセット、306人)に分けた。

 主要評価項目は無病生存期間(DFS)。

 年齢は53歳(範囲25-70)、閉経前が43.5%、T2が61.5%、T3が16.8%、N0が31.4%、N1が48.4%、核グレード3が43.9%。

 化学療法でアントラサイクリンとタキサンを用いている患者が87.3%を占め、トラスツズマブの投与はアントラサイクリン以外の薬剤と同時投与している患者が80.2%、化学療法実施コース数が7-8は61.7%、9コース以上が25.1%だった。

 乳房温存術が63%、乳房切除術が36.4%、放射線治療は68.1%、術後ホルモン療法は36.4%、術後トラスツズマブ投与は91.3%で実施された。全体のpCR率は44.9%、完全奏効(CR)が43.9%、部分奏効(PR)が50.3%、病勢安定(SD)が4.8%だった。追跡期間中央値は41カ月(範囲:3-124)。

 全体の3年無病生存DFS率は88.4%だった。また、ER/PgR陽性患者とER/PgR陰性患者の3年DFS率に有意差はなかった。

 ER/PgR発現状態別のpCR率は、ER/PgR陽性群が34.0%だったのに対し、ER/PgR陰性群が60.2%で有意に予後が良好だった(p<0.001)。

 pCRの有意な予測因子を検討した結果、ER/PgR陰性(オッズ比3.32)、cT1-2(同1.72)、閉経後(同1.50)、グレード3(同1.28)が抽出された。

 全患者においてpCRを達成した患者の3年DFS率は93%で、非pCR患者の83%と比べ、有意に高かった(p<0.001)。ER/PgR陰性患者に限るとpCRを達成した患者の3年DFS率は94%で、非pCR患者の80%と比べ、有意に高かった(p<0.001)。一方、ER/PgR陽性患者においては両群間の3年DFS率に有意差はなかった(89%対86%、p=0.103)。

 患者全体におけるDFSハザード比は、cN2-3が3.06(95%信頼区間:1.58-6.24)、cN1は2.26(同:1.23-4.41)、非pCRが1.90(同:1.18-3.13)、グレード3が1.87(同:1.20-2.97)、閉経前が1.61(同:1.04-2.52)だった。

 ER/PgR陰性患者におけるDFSハザード比は、非pCRが3.28、cT3-4が1.86、閉経前が1.7、ER/PgR陽性患者ではcN2-3が5.01、cN1が3.5、グレード3が2.95だった。

 これらの結果から高田氏は、「HER2陽性乳癌といっても、ER/PgR発現状態によってpCR率が異なることが示された。今後は、臨床研究などもER/PgR発現状態を分ける必要があると考えられた。また、今回の結果をもとに予後不良患者をあらかじめ予測することで、術前治療、術後療法の治療強度を上げるなどして予後を改善できる可能性がある」と語った。

 なお、現在解析中のデータを含めた最終解析結果を今後発表する予定だ。