HER2陽性で腫瘍量が少なく、HR陽性、腫瘍径2cm以下、リンパ節転移が0-1個の患者では、標準的な術後補助化学療法、トラスツズマブ、内分泌療法で治療を行った場合、5年の無病生存率(DFS)が91%、全生存率(OS)が97%と良好な転帰が得られることが、ランダム化比較試験(RCT)のメタアナリシスから明らかになった。12月10日から14日まで米国サンアントニオで開催されたサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS2013)で、米国National Cancer InstituteのCiara C O’Sullivan氏が発表した。

 O’Sullivan氏らは、HER2陽性乳癌で腫瘍量が少ない(腫瘍のサイズが小さく、リンパ節転移がない、またはほとんどない)患者のサブグループでは、化学療法とトラスツズマブの併用で良好な転帰が得られるとの仮説をたて、メタアナリシスで解析した。

 メタアナリシスの目的は、不要な毒性を回避するため、追加治療を評価する臨床試験から除外できる患者のグループを特定すること、RCTにおいて化学療法とトラスツズマブを併用した、腫瘍量が少ないHER2陽性乳癌患者のDFSとOSを解析することだった。

 RCTはMedlineを用いて2004年から2013年の間で検索した。術後補助療法でトラスツズマブを検討したフェーズ3試験のうち、HERA、NCCTG N9831、NSABP B31、PACS 04、FinHERの5件の試験を解析対象とした。

 HERA、NCCTG N9831、NSABP B31、PACS 04、FinHERの各試験において、HER2陽性の患者はそれぞれ5102人、3505人、3222人、528人、232人だった。トラスツズマブの投与は、シークエンシャル、同時またはシークエンシャル、同時のいずれかで、投与期間は9週から最長2年だった。

 化学療法のレジメンも試験によりさまざまだった。HERA試験では94%にドキソルビシンが投与された。NCCTG N9831試験ではAC療法(ドキソルビシン、シクロホスファミド)とパクリタキセル、NSABP B31試験ではAC療法とパクリタキセル、PACS 04試験ではFEC療法(フルオロウラシル、エピルビシン、シクロホスファミド)とED療法(エピルビシン、ドセタキセル)、FinHER試験ではドセタキセルとビノレルビンとFEC療法だった。追跡期間中央値は、それぞれ8.0年、8.7年、9.4年、5.0年、5.6年だった。

 統計学的な解析の対象は、トラスツズマブの投与群にランダム化された、腫瘍径が2cm以下の患者とした。ホルモン受容体(HR)の陽性と陰性のコホートは分けて解析した。主要評価項目はDFSとOSとだった。

 HR陽性の患者は1375人、陰性の患者は1213人だった。

 5年のDFSを試験別にみると、HR陽性の患者では、HERA試験で86%、NCCTG N9831試験で89%、NSABP B31試験で89%、PACS 04試験で85%、FinHER試験で76%となった(p=0.018)。HR陰性の患者では、それぞれ75%、85%、90%、65%、84%だった(p<0.0001)。

 5年のDFSをリンパ節転移の数でみると、HR陽性の患者では、0個で92%、1個で90%、2-3個で87%、4個以上で79%となった(p<0.0001)。HR陰性の患者では、それぞれ83%、86%、79%、73%だった(p=0.006)。0または1個の患者の5年のDFS(95%信頼区間)は、HR陽性の患者では91%(89-93)、HR陰性の患者では84%(81-87)だった。

 5年のOSを試験別にみると、HR陽性の患者では、HERA試験で94%、NCCTG N9831試験で96%、NSABP B31試験で97%、PACS 04試験で94%、FinHER試験で95%となった(p=0.78)。HR陰性の患者では、それぞれ90%、93%、96%、86%、92%だった(p=0.02)。

 5年のOSをリンパ節転移の数でみると、HR陽性の患者では、0個、1個、2-3個でいずれも97%、4個以上で91%となった(p<0.0001)。HR陰性の患者では、それぞれ94%、95%、90%、86%だった(p<0.0001)。0または1個の患者の5年のOS(95%信頼区間)は、HR陽性の患者では97%(96-98)、HR陰性の患者では95%(93-96)だった。

 O’Sullivan氏は「良好な転帰が得られることが示された患者は、追加治療を評価する試験から除外できる可能性が示唆された。今回得られたデータは、治療を減らすことを評価するデザインの試験において基準となりうる」と話した。

 またO’Sullivan氏は、SABCS2013で米国Dana-Faber Cancer InstituteのSara M. Tolaney氏が発表したAPT試験を参照にあげた。この試験では、リンパ節転移陰性のHER2陽性乳癌患者に対するパクリタキセルとトラスツズマブの併用を検討した。APT試験の3年のDFSは、HR陽性の患者(272人)で98.5%、HR陰性の患者(134人)で99.2%だった。これに対し、O’Sullivan氏らがHERA試験とNCCTG N9831試験で治療した患者では、HR陽性の患者(299人)に腫瘍径が1cm超かつ2cm以下の患者がAPT試験の2倍以上含まれたが、3年のDFSは95.5%、HR陰性の患者(372人)で88.6%となった。