術前化学療法(NAC)施行後のトリプルネガティブ乳癌患者のおよそ1割でヤヌスキナーゼ2(JAK2)の増幅が見られたほか、JAK2増幅のある患者は予後不良だった。米国Vanderbilt UniversityのBalko JM氏らが、米国サンアントニオで12月11日から14日まで開催されたサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS2013)で発表した。

 Balko JM氏らは、NAC後の残存病変のあるトリプルネガティブ乳癌患者114人を対象に、化学療法抵抗性に関係する部位のほか、微小残存病変をなくすための術後補助化学療法の標的を同定することを目的に、残存病変について分子生物学的解析を行った。

 ヤヌスキナーゼ2(JAK2)は、サイトカイン仲介性シグナルをSTAT経路に伝達する受容体結合チロシンキナーゼで、増殖と分化に関するシグナル伝達を促進する。

 112例でKi67、ER、PR、HER2などの免疫染色を実施し、81例で次世代シーケンスを用いて182の癌遺伝子、癌抑制遺伝子を解析したほか、89例で450遺伝子について発現解析を行った。
 
 年齢中央値は48歳(範囲24-78)、ステージIIIbが69%、タキサン使用患者は50%、閉経前が50%、リンパ節転移陽性が63%だった。

 まず、NAC後のトリプルネガティブ乳癌腫瘍サンプルの体細胞コピー数の異常(CNA)を調べたところ、JAK2の増幅はおよそ10%で見られた。また最もCNAが多かったのはTP53でおよそ9割、MCL1が6割弱、MYCが3割と続いた。

 未治療のbasal-like原発乳癌において、JAK2が増幅した患者の割合は数%だったのに対し、NAC後のトリプルネガティブ乳癌患者は10%と多い傾向だった(p=0.08)。

 2人のトリプルネガティブ乳癌患者について、NAC前、NAC後、転移巣のサンプルをもとに、JAK2コピー数の経時変化を調べたところ、NAC後はNAC前と比べ増加し、転移巣ではさらに増えた。1人はNAC前のJAK2コピー数が3、NAC後が7、転移巣は9、もう1人はそれぞれ3、6、7だった。

 トリプルネガティブ乳癌において、JAK2の増幅がある患者の無再発率と生存率は、JAK2の増幅のない患者と比べ、有意に不良だった(それぞれp=0.005、p=0.002)。

 未治療のトリプルネガティブ原発乳癌では、JAK2の増幅は見られるがまれだった。

 JAK2増幅は、乳癌細胞株とトリプルネガティブ乳癌異種移植モデルにおいてもそれぞれ確認された。

 JAK2の増幅が見られた細胞では、TGF-βに誘導される遺伝子、上皮間葉転換(EMT)の遺伝子のほか、インターロイキン6発現量の有意な上昇(p=0.008)が確認された。

 これらの結果から演者らは、「トリプルネガティブ乳癌において、JAK2増幅がSTAT3を活性化し、IL-6の産生、アポトーシス抑制タンパク質のBCL-2、MCL-1などの発現量上昇、EMTの誘導、乳癌幹細胞の維持などに作用することで、NACへの治療反応性が悪化し、予後不良となるのではないか」と語った。

 また、JAK2が増幅している患者においてJAK阻害薬ruxolitinib投与のベネフィットが得られる可能性があるとし、現在臨床試験を進行中であると語った。