ER陽性の進行乳癌では、リガンド結合ドメインにER(ESR1)遺伝子の突然変異を認め、このような遺伝子変異はリガンド非依存性に活動し、内分泌療法に抵抗性となる可能性が、レトロスペクティブな検討から示された。12月10日から14日まで米国サンアントニオで開催されているサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS2013)で、米国Dana Farber Cancer InstituteのRinath M Jeselsohn氏が発表した。

 ER陽性乳癌の発癌において、ERは重要なドライバー遺伝子であり、内分泌療法の標的である。有効な内分泌療法があるにもかかわらず、内分泌療法抵抗性は依然として課題となっている。過去の複数の研究では、内分泌療法抵抗性の推定されるメカニズムとして、臨床検体のER遺伝子変異の検索に焦点が当てられた。

 Jeselsohn氏らは、ホルモン依存性乳癌の自然の経過を通し、内分泌療法抵抗性の検体でER遺伝子変異保有率を包括的に検討し、検出された遺伝子変異で多く認められる機能的な役割の特徴を明らかにすることを目的として、検討を行った。

 208人から249個の腫瘍検体を収集し、このうちER陽性HER2陰性は134個、ER陰性は115個だった。ER陽性の134検体中、原発腫瘍は58個、転移性腫瘍は76個で、37個は同一患者の原発腫瘍と転移性腫瘍だった。転移性腫瘍のうち、51個はセカンドラインまでの治療を受けた早期の転移、25個はサードライン以降の治療まで受けた後期の再発だった。ERおよび181個の癌関連遺伝子の配列をコードする次世代シーケンシングを用いて、すべての腫瘍について広範囲にシーケンスを実施した。

 ER陽性の転移性腫瘍では14%にER遺伝子変異を認め、原発腫瘍と比べて有意に多かった(p<0.05)。

 ER遺伝子変異はER陰性乳癌では検出されなかった。ER陽性の転移性腫瘍では、ERのリガンド結合ドメインのコドン537、538において、体細胞突然変異を繰り返していた。このような変異は原発腫瘍では認めなかったが、転移性腫瘍では早期の転移の12%、後期の転移の20%に発現していた。全体では9個の体細胞突然変異を認め、Y537Cは11%、Y537Nは33%、Y537は22%、D538Gは33%だった。
 
 同一患者の原発腫瘍と転移性腫瘍の検体では、これらの変異は転移性腫瘍のみに認められた。一例として、II期のER陽性乳癌の患者は、ESR1遺伝子変異は認めず、術後補助療法としてCMF療法(シクロホスファミド、メトトレキサート、フルオロウラシル)を行った。6年目にリンパ節転移が発生し、タモキシフェンを投与したが、ESR1遺伝子変異は認めなかった。しかし、13年目にリンパ節転移が増悪し、リガンド結合ドメインのY537Nに突然変異が認められ、内分泌療法抵抗性が発生した。

 細胞株モデルを用いたER遺伝子変異の機能解析では、ER遺伝子変異はリガンド非依存性に活発となり、エストロゲン低下をきたす内分泌療法、タモキシフェン、フルベストラントに対する抵抗性を与えることがわかった。

 ER遺伝子変異は原発腫瘍では検出されず、頻度は内分泌療法のレジメン数と相関したことから、抵抗性のメカニズムとしてクローン選択による遺伝子の進化が示唆された。そのため、Jeselsohn氏は「今回の研究は、転移・再発では連続的な生検とプロファイリングが重要であることを強調するもの」とした。

 Jeselsohn氏は「今回認められた遺伝子変異が、内分泌療法抵抗性の遺伝学的なドライバーであると考えられる。今回得られた知見を確認し、内分泌療法抵抗性を克服する治療戦略を確認するための前向きの臨床試験が必要」と結論した。