PIK3遺伝子変異を有し、PI3K阻害剤に抵抗性の乳癌に対し、PI3K阻害剤CDK4/6阻害剤LEE-011の併用が有効な治療戦略となる可能性があることが、薬剤の併用のスクリーニングから示された。12月10日から14日まで米国サンアントニオで開催されているサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS2013)で、米国Massachusetts General HospitalのSadhna R Vora氏が発表した。

 PIK3シグナル伝達経路は乳癌患者の70%で過剰な活性を示す。PIK3CA遺伝子変異はER陽性乳癌で多く観察され、頻度は約30%と報告されており、PI3K阻害剤単剤に最も感受性が高い。ただし、初回の奏効と安定状態(SD)の延長は観察されているものの、抵抗性が現れることも多い。PIK3遺伝子変異を認める癌の一部には、変異があるにもかかわらず、PI3K阻害剤に曝露しても奏効やSDが得られないものもある。

 そのためVora氏らは、PI3K阻害剤に対する獲得性の抵抗性を克服する方法を見出し、PI3K阻害剤による初回の奏効を改善する併用療養を決定し、PI3K阻害剤単剤に対する抵抗性を予測するバイオマーカーを同定することを目的として、検討を行った。

 まず、PI3K阻害剤に対する抵抗性を克服する方法を見出すため、PIK3CA遺伝子変異を有する細胞株のMDA-MB-453とT47Dを用いて、p110αアイソフォームの特異的な阻害剤BYL-719に獲得性の抵抗性を持つ2つのモデルを作製した。また細胞株のMCF7を用いて、pan-PI3K阻害剤GDC-094に抵抗性を持つモデルも作製した。細胞株は、PIK3遺伝子変異の状態とPI3Kの阻害に対する感受性により選択した。

 各細胞株はPI3K阻害剤の濃度が上昇しても増殖し、感受性のある親株の細胞の生存能力が有効に低下し、pAKTが阻害される用量でも容易に増殖した。BYL-719に抵抗性の細胞株はどちらもGDC-094に交差抵抗性があり、MCF7R細胞株はBYL-719に難治性だった。

 次に、PI3K阻害剤に対する抵抗性を克服するためのメカニズムを解明するため、PI3K阻害剤に抵抗性の細胞において、固定した用量のPI3K阻害剤を併用、または併用なしで、45種の標的に投与・増量し、組み合わせる薬剤のスクリーニングを行い、PI3K阻害剤と有効に相乗作用を示す薬剤を決定した。

 3種のPI3K阻害剤抵抗性の各モデルにおいて、CDK4/6阻害剤のLEE-011とPI3K阻害剤に相乗作用が認められた。mTORC阻害剤も活性を示した。

 さらに、PI3K阻害剤に新たな抵抗性を持つ、PIK3CA遺伝子変異を有する乳癌細胞株のCAL51において、CDK4/6阻害剤のLEE-011とPI3K阻害剤のGDC-094の併用を検証すると、それぞれの薬剤の活性は小さかったが、再度有効性が示された。

 ファーストライン治療の設定でLEE-011をPI3K阻害剤に追加することが有効か否かを検証するため、PIK3C遺伝子変異を有するMCF7、MDA-MB-453、T47Dを雌のヌードマウスに注射し、賦形薬、BYL-719、LEE-011、または併用で治療した。

 その結果、3つのモデルそれぞれにおいて、単剤よりも併用で腫瘍が縮小し、単剤よりも抵抗性の獲得が遅かった。

 さらにMCF7とCAL51の両方の細胞株に、GDC-094とLEE-011を単剤、または併用で投与すると、併用では腫瘍が縮小したが、単剤では縮小しなかった。

 Vora氏によると、今回の知見をもとに、LEE-011またはBYL-719とレトロゾールの併用、LEE-011とBYL-710とレトロゾールの3剤併用を検討し、推奨量を決定するフェーズ1試験、推奨量で投与する3群を比較するフェーズ2試験が予定されている。