術前補助化学療法で抗HER2薬トラスツズマブとラパチニブを併用したHER2陽性患者において、PIK3CA変異のある乳癌患者の病理学的完全奏効(pCR)率は、PIK3CA変異のない患者と比べて有意に低かった。また、HER2陽性かつER陽性でPIK3CA変異があると、最も低いpCR率を示した。GeparQuinto試験とGeparSixto試験を基に解析した結果によるもので、ドイツGerma Breast Groupを代表してSibylle Loibl氏らが、米国サンアントニオで12月10日から14日まで開催されているサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS2013)で発表した。

 PIK3CA(ホスファチジルイノシトール-4,5-二リン酸 3-キナーゼ触媒サブユニットαポリペプチド遺伝子)は、乳癌患者の20%で見られる遺伝子変異で、その変異の90%以上はエクソン9とエクソン20に存在するとされる。エストロゲン受容体(ER)陰性患者よりもER陽性患者において多く見られるほか、経路の変異はHER2抵抗性に関与すると考えられている。

 そこでLoibl氏らは、術前化学療法を実施したHER2陽性もしくはトリプルネガティブの原発性乳癌患者を対象に、PIK3変異と予後の関係を検討した。

 解析対象は、GeparQuinto試験において術前化学療法としてトラスツズマブもしくはラパチニブを投与した患者と、GeparSixto試験においてトラスツズマブとラパチニブの2剤を術前化学療法で投与した患者の合計737人。

 中央検査で、HER2、ER、プロゲステロン受容体(PgR)の発現状態、PIK3CA変異を調べた。PIK3CA変異は、コア生検で得られた試料をホルマリン固定パラフィン包埋した後に解析した。

 GeparQuinto試験は、HER2陽性患者への術前補助化学療法としてEC療法+ドキソルビシンにトラスツズマブを上乗せした患者とラパチニブを上乗せした患者について有効性を比較した試験。GeparSixto試験は、HER2陽性もしくはトリプルネガティブ乳癌に対し、術前補助化学療法として非ペグ化リポソームドキソルビシン/パクリタキセルにカルボプラチンを追加した際の有効性を検討した試験。全てのHER2陽性患者に対してトラスツズマブとラパチニブを、トリプルネガティブ乳癌に対してはベバシズマブを投与しており、その後に手術を実施した。

 両試験においてPIK3CA変異を持つ患者の割合は、HER2陽性患者(360人)の20.8%、トリプルネガティブ乳癌(285人)の7.4%だった。

 HER2陽性かつHR陽性患者のPIK3CA変異率は、HER2陽性かつHR陰性患者とともに20.8%だった。

 HER2陽性患者に術前化学療法でトラスツズマブもしくはラパチニブを投与したGeparQuinto試験において、PIK3CA変異のある患者のpCR率は17.9%、PIK3CA変異のない患者は26.4%で有意差はなかった(p=0.216)。トラスツズマブ群、ラパチニブ群に分けて解析しても両群間に有意差は見られなかった。

 HER2陽性患者に対しトラスツズマブとラパチニブの2剤を投与、もしくはトリプルネガティブ乳癌に対してベバシズマブを投与するGeparSixto試験において、PIK3CA変異のある患者のpCR率は22.4%だったのに対し、PIK3CA変異のない患者は41.6%と有意差に高かった(p=0.003)。HER2陽性患者群、HER2陽性/HR陽性群においてもPIK3CA変異のない患者は有意にpCR率が高かった(それぞれ17.0%対37.1%、6.3%対29.9%)。一方、HER2陽性HR陰性患者では両群間に有意差はなかった(40.0%対48.1%)。

 さらに、GeparSixto試験のデータをもとに、HER2陽性患者のpCRを予測する有意な因子を多変量解析で検討したところ、HR陽性(オッズ比0.44、95%信頼区間:0.24-0.79)、PIK3CA変異(オッズ比0.29、95%信頼区間:0.12-0.71)が抽出された。

 Loibl氏は、「今回の試験結果はNeo-Altto1とNeosphere2の結果と一致していた。PIK3CA変異のある腫瘍では有意にpCR率が低下した。HER2陽性かつER陽性でPIK3CA変異のある患者で最も低いpCR率を示した。そのため、PIK3を標的にした薬剤など新しい治療選択肢の開発が求められる」と指摘した。