HER2陰性の閉経後転移乳がん(MBC)に対する1次治療として、レトロゾールダサチニブを加えることでPFSが延長したが、臨床ベネフィット率(CBR)には差がなかった。フェーズ2試験から明らかになったもので、12月10日から14日まで米国サンアントニオで開催されているSan Antonio Breast Cancer Symposium(SABCS)において、US Oncology Research/ Rocky Mountain Cancer CenterのDevchand Paul氏が発表した。

 ダサチニブは、c-Src、BCR-ABL、c-KIT、PDGFRβ、Ephrinキナーゼの経口ATP-競合性阻害剤である。タモキシフェンとの併用によって、in vivoで、ホルモン療法耐性の乳がん細胞に対する増殖阻害効果が報告されており、アロマターゼ阻害剤(AI)に対する耐性発現を遅延させる可能性がある。また、骨アナボリック作用、骨吸収抑制作用を有しており、アロマターゼ阻害剤による骨塩量低下の抑制効果も期待される。

 本試験では、MBCに対するAIの1次治療にダサチニブを加えることで、AI単独と比較して臨床ベネフィット率(CBR)、無増悪生存(PFS)が改善するとの仮説を検証すべく行われた。主要エンドポイントは臨床ベネフィット率(CR+PR+SD[≧6カ月])、副次エンドポイントは無増悪生存(PFS)、奏効率(ORR)、毒性、骨塩量(BMD)の変化とした。

 主な登録基準は、閉経後女性、ER陽性、HER2陰性、AIアジュバント療法は1年以上前であれば可、転移疾患に対する化学療法0-1ライン、MBCに対してAI未治療。レトロゾールは2.5mg1日1回経口投与、ダサチニブは100mgを1日1回経口投与とした。

 120例が登録され、57例がレトロゾール+ダサチニブ(ダサチニブ併用)群、63例がレトロゾール群に割り付けられた。レトロゾール群はPD後のダサチニブ併用群へのクロスオーバーを可とした。

 両群の患者背景に差は認められず、年齢中央値はダサチニブ併用群62(37-81)歳、レトロゾール群61(36-87)歳、再発MBCの無病間隔(DFI)は76カ月、77カ月で、Stage IVが、24例(42%)、20例(32%)含まれていた。約50%が化学療法未治療で、40%がタキサンによる治療歴があった。AIアジュバント療法を受けていた患者は10%以下だった。ホルモン療法未治療はダサチニブ併用群60%、レトロゾール群49%。

 有害事象の多くはダサチニブ投与で予想されるもので、グレード2/3の有害事象は、発赤、浮腫、好中球減少、吐き気などが、ほぼ10%の患者に発現した。9%の患者で胸水を認めた(グレード2が4例7%、3が1例2%)。15例(26%)でダサチニブの減量を要した。

 ダサチニブ併用群のCBRは71%(95%信頼区間:58-83)で、レトロゾール群の66%(95%信頼区間:52-77)と差がなかった。レトロゾール群でPD後にダサチニブ併用群へクロスオーバーした35例におけるCBRは23%(95%信頼区間:10-40)だった。

 ITT集団におけるPFSは、ダサチニブ併用群で20.1カ月、レトロゾール群9.9カ月でハザード比は0.69だったが、Paul氏は、「この試験は非対照試験で、クロスオーバーも許されていた。この数値は予備的なものとみなさねばならない」とした。

 ダサチニブ併用群32%、レトロゾール併用群38%で、試験開始時に骨塩量(BMD) が低下(Tスコア<-1.5)し骨減少症の状態にあったが、最終のBMD測定では、骨減少症はダサチニブ併用群で14%にまで減少した。レトロゾール群は32%だった。なお、ビスホスフォネートを投与されていた患者は両群ともに約30%。

 Paul氏は、「この成績は、ダサチニブがレトロゾールに対する耐性獲得を阻害していることを示唆している。ステロイド型AIとの併用ではPFS改善は示されておらず、ダサチニブは、非ステロイド型AIによる1次治療との併用が有益だと考えられる。患者組織を用い、ダサチニブのベネフィット予測のためのバイオマーカー評価を行うことによって、将来の患者選択について有用な情報が得られるだろう」とまとめた。