ER陽性の早期乳癌で、術後内分泌療法としてアロマターゼ阻害剤(AI)を投与した患者では、毒性による治療の早期中止は治療開始前から存在した患者報告による症状(patient-reported symptoms)と相関し、早期中止のリスクはこれらの症状が増えるほど高くなることが、非盲検、フェーズ4のランダム化試験(ELPh)の探索的な解析から示された。12月10日から14日まで米国サンアントニオで開催されているサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS2013)で、米国University of MichiganのNorah L Henry氏が発表した。

 タモキシフェンと比べて、AIは無病生存期間(DFS)と全生存期間(OS)を改善することが報告されている。AIの服薬非遵守は死亡率の増加と相関するが、毒性による早期中止は患者の20-30%に上り、主に筋骨格系の症状による。その他の症状には、気分障害、認知機能障害、不眠、疲労感がある。AIによる治療の非継続性の予測因子としては、年齢、BMI、前治療の化学療法などが示されている。

 Henry氏らは、AIによる治療開始前からすでに存在した、患者報告による症状が治療の継続性に影響する可能性があるとの仮説をたてた。治療開始前に存在した患者報告による症状と、治療開始から12カ月以内の毒性による治療中止との相関を検討するため、探索的な解析を行った。

 解析の対象は、エキセメスタンとレトロゾールによる術後内分泌療法を2年間行い、薬理ゲノミクスを検討したELPh試験に登録した患者とした。同試験では、早期乳癌でER陽性の閉経後の女性503人が登録された。

 QOL評価と血清中のホルモン濃度について、治療開始前、1、3、6、12、24カ月後に、うつ病の自己評価尺度(CESD)、不安下位尺度(HADS-A)、ピッツバーグ睡眠調査票(PSQI)、全般的な症状の質問票(BCPT)の質問票に回答を求めた。血中エストロゲン濃度(estrone-1-sulfate)は、AIによる治療開始前と3カ月後に測定した。

 治療開始前の総合的な症状を明確にするため、複数の症状を1つのスコアに合計した。症状の合計には、PQSI>5、CESD≧16、HADS>7、集中力低下、疲労感を含めた。

 対象の平均年齢は59歳、BMIの平均は29.1kg/m2だった。前治療の化学療法は44.5%が受け、前治療がタキサン系抗癌剤だった患者は32.1%だった。前治療がタモキシフェンだった患者は36.5%だった。

 503人中、500人がランダム化された。レトロゾール群は252人、エキセメスタン群は248人となり、毒性による治療中止はそれぞれ60人と80人で、計140人となった。

 AIを中止した患者と継続した患者の間で、治療開始前の症状で有意差があったのは、不眠(オッズ比1.91、p=0.002)、疲労感(オッズ比1.76、p<0.001)、健忘(オッズ比1.66、p=0.015)だった。関節痛も多く認めたが、両患者の間で有意差はなかった。

 治療前の因子についての多変量解析において抽出されたのは、年齢(オッズ比0.97[0.95-1.00]、p=0.028)、薬剤(エキセメスタン vs レトロゾール)(オッズ比1.63[1.07-2.49]、p=0.024)、治療開始前の不眠の質(PSQI>5 vs ≦5)(オッズ比1.79[1.15-2.79]、p=0.010)、治療開始前の集中力低下(あり vs なし)(p=0.017)だった。

 12カ月以内にAIを中止した割合は、治療開始前に症状がなかった患者と比べて、1-2の症状を有する患者ではオッズ比が1.6、3-5の症状を有する患者ではオッズ比が2.5となった。

 Henry氏は「個々の症状に焦点を当てるよりも、1つの症状群として治療を行うことが有用と考えられ、症状をまず管理することがAIによる治療の継続性を高めることになる。治療中止のリスクが高い患者に対する介入に焦点を当てることができる」と話し、可能な介入として、タモキシフェンなどの別の治療法の選択、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)などの薬理学的な治療、行動介入や運動などの非薬理学的な治療をあげた。