HER2陽性乳癌患者に対する術前補助化学療法として、TCH療法(ドセタキセル、カルボプラチン[TC]、トラスツズマブ)、TCL療法(TC、ラパチニブ)、TCHL療法(TCH、ラパチニブ)を比較した結果、病理学的完全奏効(pCR)率はTCH療法とTCHL療法で同様となったことが、非盲検、フェーズ2のランダム化試験(TRIO-US B07)の最終解析から示された。12月10日から14日まで米国サンアントニオで開催されているサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS2013)で、米国University of CaliforniaのSara A Hurvitz氏が発表した。

 トラスツズマブとラパチニブを併用して二重にHER2を阻害するとpCR率が上昇することが、フェーズ3のNeoALTTO試験やNSABP B-41試験など、複数の試験から報告されている。またフェーズ3のBCIRG006試験では、TCH療法はアントラサイクリンを含むレジメンと比べて、有効性は同様、安全性は優れることが示された。

 Hurvitz氏らはTRIO-US B07試験において、術前補助化学療法として、TCH療法(TCH群)、TCL療法(TCL群)、TCHL療法(TCHL群)について、臨床的・分子学的な効果を評価した。

 対象は、I-III期の切除可能な乳癌で、18-70歳、FISHまたはSISH(silver in situ hybridization)でHER2陽性が確認された患者だった。

 導入サイクルでは、TCH群ではトラスツズマブを1回、TCL群ではラパチニブを21日間、TCHL群ではトラスツズマブを1回とラパチニブを21日間投与した。トラスツズマブは初回投与を8mg/kg、2回目以降の投与は6mg/kgとした。ラパチニブは1000mg/日を1日1回内服した。その後、3週毎にTCH療法、TCL療法、TCHL療法をそれぞれ6サイクル施行した。TC療法では、ドセタキセルは75mg/m2、カルボプラチンはAUC6(最初の6人にはAUC5)で投与した。

 安全性の検証のため、最初の20人はTCHL群とし、残りの患者を1:1:1で3群のいずれかに割付けた。生検は治療開始前、導入サイクルの開始から14-21日後、手術時に行った。主要評価項目はpCR率で、乳房および腋窩リンパ節に浸潤癌を認めないこととした。

 2008年10月から2012年12月までに、米国の13施設から130人が登録された。ITT集団は試験治療を1回以上受けた適格患者で、128人となった。治療を完遂したのは103人だった。

 ITT集団の128人において、TCH群は34人、TCL群は36人、TCHL群は58人となった。年齢中央値はそれぞれ48歳、51歳、47歳、ERとPRがともに陰性の患者はそれぞれ41%、50%、41%、ともに陽性の患者は59%、50%、59%だった。II期とIII期の患者は、TCH群ではそれぞれ59%と36%、TCL群では78%と20%、TCHL群では65%と29%だった。腫瘍径の中央値は、それぞれ5.54cm、5.16cm、4.15cmだった。

 プロトコール治療の完遂率は、TCH群100%、TCL群72%、TCHL群73%となり、過去の試験と同様にラパチニブを含む群で低かった。相対用量強度(RDI)の平均は、それぞれ98%、85%、86%だった。

 pCR率は、TCH群47%、TCL群25%、TCHL群52%となり、TCHL群とTCL群に有意差を認めた(p=0.02)。TCH群とTCL群には有意差はなかった(p=0.07)。

 pCR率がTCH群とTCHL群で同様だった理由として、Hurvitz氏は試験サイズが小さかったことをあげた。

 ホルモン受容体の状態別にpCRをみると、ERとPRがともに陰性の患者では、TCH群57%、TCL群41%、TCHL群67%、ともに陽性の患者では、それぞれ40%、11%、40%となった。

 心毒性について、10%を超える左室駆出率(LVEF)の低下および正常値下限を下回る事象を認めたのは、TCH群1人、TCL群2人、TCHL群1人だった。グレード3または4の左室機能障害は観察されなかった。

 患者の5%以上に観察されたグレード3または4の非血液毒性では、下痢がTCHL群に多く発現し、TCH群3%、TCL群14%、TCHL群28%だった。疼痛はそれぞれ9%、19%、19%、感染症は6%、14%、9%、低カリウム血症は6%、6%、7%、疲労感は6%、8%、5%、脱水は3%、0%、9%に発現した。血液毒性では、好中球減少はそれぞれ12%、14%、13%、貧血は9%、8%、7%、血小板減少は3%、9%、3%に発現した。

 Hurvitz氏は、同試験で現在進行中である、奏効に影響する遺伝子とシグナル伝達経路の影響を評価する分子学的な解析についても紹介した。

 治療開始前にHER2の発現量が低かった19人中、pCRが得られたのは4人のみだった。治療開始前と導入サイクル施行後の両方で検体が採取された89人を、Miller-Payne Gradingでグレード1-3のpoor response、グレード4-5のgood responseに分け、poor responseの患者をみると、TCH群(34人中26人)ではN-MYC、CCNB1、PLK2、TEKが、TCL群(36人中25人)ではBCL2、BEX1、BNIP2が、TCHL群(58人中38人)では、MYB、BNIP3が多く発現していた。

 Hurvitz氏は「他の試験の知見と異なり、TCH療法とTCHL療法で観察されたpCR率は同様となった。TC療法、TCH療法にラパチニブを加えると、治療関連毒性が増強し、化学療法と抗HER2療法の効果が限定される」と話した。