HER2陽性またはトリプルネガティブの局所進行・転移性乳癌に対し、熱ショックタンパク質90(Hsp90)阻害薬のganetespibを単剤投与したところ、認容性が確認されたほか、抗腫瘍活性が示された。フェーズ2のENCHANT-1試験の中間解析結果について、ベルギーJules Bordet InstituteのAhmad Awada氏らが、米国サンアントニオで12月10日から14日まで開催されているサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS2013)で発表した。

 熱ショックタンパク質90(Hsp90)は、乳癌細胞の発生と進行に関与する複数のシグナル伝達タンパク質を制御する分子シャペロンタンパク質。Hsp90の発現レベル上昇は、予後の短い転移性乳癌と関係があることが報告されている。

 ganetespibはHsp90阻害薬で、HER2、ALK、RAF、HIF-1αなどの腫瘍タンパク質を分解することで、乳癌細胞の増殖、血管新生、発癌経路のHIF1-αを阻害する。他のHsp90阻害薬で見られた重篤な肝毒性や視力障害などが発現しないことが報告されている。

 ganetespibを単剤投与するフェーズ2A試験では、HER2陽性乳癌に対する有効性が報告されたほか、トリプルネガティブ乳癌に対しても有効である可能性を示唆する結果が得られていた。

 ENCHANT-1試験は、欧州、米国、南米、韓国からおよそ25施設が参加する非盲検国際共同フェーズ2試験。局所進行・転移性乳癌を対象にganetespib単剤(150mg/m2を週2回、3週投与し、1週休薬)をファーストラインで投与した際の有効性を検討している。ganetespib単剤投与で客観的奏効(OR)もしくは病勢安定(SD)が得られた患者は病勢進行(PD)するまで投与を継続する。PDとなった場合は、パクリタキセルとの併用投与を検討した。

 今回報告されたのはHER2陽性乳癌(5人)とトリプルネガティブ乳癌患者(15人)に関する中間解析結果だった。

 主要評価項目は奏効率。副次評価項目は、初期の代謝反応を評価するためF-18-FDG値の変化、奏効期間、無増悪生存期間(PFS)、安全性。F-18-FDG値の変化は初期の代謝反応を評価するために用いた。PET/CTは開始前と投与3週間時点で、CTは6週間おきに撮影した。

 HER2陽性患者の年齢中央値は60歳、トリプルネガティブ乳癌患者は53歳、ECOG PS 0はそれぞれ80%、47%、乳管癌が100%、80%、初期診断時ステージがI/IIは0%、20%、IIIB/IIIC/IVが60%、47%、術後補助化学療法歴のある患者は80%、33%だった。

 ganetespib単剤投与によって投与3週間時点で代謝反応が見られたのは、HER2陽性患者4人のうち3人、トリプルネガティブ乳癌患者11人のうち4人だった。

 治験者による効果判定では、HER2陽性患者(4人)のうち部分奏効(PR)が得られたのは2人、病勢安定(SD)が2人、独立審査委員による効果判定では完全奏効(CR)が1人、PRが2人、SDが1人だった。

 同様に、トリプルネガティブ乳癌においては、治験者による効果判定でPRだった患者が2人、SDが4人、病勢進行(PD)が5人、独立審査委員による効果判定ではPRが2人、SDが5人、PDが4人だった。

 最も多かった有害事象はグレード1-3の下痢で8割の患者で見られた(グレード1-2が約6割、グレード3が2割)。グレード1-3の疲労(4割強)、悪心(3割強)、食欲減退(約3割)、ALT上昇(2割強)と続いた。

 なお、今回の中間解析でステージ2の患者登録に進行する基準を達成しており、登録は継続している。

 Awada氏は、「HER2陽性またはトリプルネガティブの局所進行・転移性乳癌に対するganetespibの単剤投与は、良好な抗腫瘍活性を示したほか、認容性が確認された。下痢などの有害事象が発現したが許容可能だった。また、投与初期の代謝反応は奏効率と関連する可能性が示唆された」と語った。

 今後は、初期乳癌や進行乳癌に対し、ganetespibをその他の治療とともに投与することや、ganetespibの投与に最適な患者を見つけるためのバイオマーカーの開発が必要であると指摘した。