HER2陽性転移性乳癌患者におけるトラスツズマブラパチニブによる治療は、医療費全体はほぼ同じだが、投与法の違いからトラスツズマブの方が投薬にかかる費用が顕著に高く、一方、治療中止率はラパチニブで高いことが明らかになった。医療保険データベースを用いて、実臨床での治療状況を解析した研究によるもの。米国Analysis Group社のGenevieve Gauthier氏らが、12月4日から8日まで米国サンアントニオで開催されたサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS2012)で発表した。

 研究では、医療保険データベース「PharMetrics Integrated Database」を用い、治療の中止(連続して45日以上の中断)、医療資源の利用(入院、救急、外来など)、医療コスト(入院費や外来費などの医療サービス費、薬剤費を含む投薬費)を解析した。

 対象は、ラパチニブが米国で承認された2007年3月13日以降で、過去6カ月以上、医療保険制度に登録し、トラスツズマブもしくはラパチニブの使用開始から30日以上保険に登録していた転移性乳癌患者643人(トラスツズマブ治療381人、ラパチニブ治療262人)。

 患者背景で違いが見られたのは、年齢(トラスツズマブ治療56.7歳、ラパチニブ治療54.4歳、p=0.020)、投薬開始時までの罹病期間(185.8日、518.5日、p<0.001)、ファーストライン治療としての投薬(69%、28.2%、p<0.001)などだった。またラパチニブ治療患者でトラスツズマブ治療歴のある患者は65.3%を占めた。

 解析の結果、治療中止率はトラスツズマブ治療では48%だったが、ラパチニブ治療では63%と有意に高かった(ハザード比1.57、p<0.001)。

 医療資源の利用について1年間の発生率を比べると、外来受診がトラスツズマブ治療で26.64%、ラパチニブ治療で29.60%(発生率比IRR 1.19、p=0.05)、投薬のための受診がそれぞれ27.32%、13.26%(IRR 0.34、p=0.05)、入院はトラスツズマブ治療で0.77%、ラパチニブ治療で0.97%(IRR 1.15)だった。

 医療コストは、平均で1人あたり月に約11000ドル、その半分が医療サービス費だった(トラスツズマブ治療43.5%、ラパチニブ治療59.4%)。全体的にトラスツズマブとラパチニブの医療コストはほぼ同じだったが、投薬費はトラスツズマブのほうが1605ドル高かった(p<0.001)。ただし投薬費のうち、薬剤費はラパチニブのほうが高く(p<0.001)、投薬のための受診にかかる費用はトラスツズマブのほうが顕著に高かった(p<0.001)。

 またsensitivity analysis(感度解析)により、トラスツズマブ前治療歴の有無で、トラスツズマブ治療とラパチニブ治療を比較した。その結果、トラスツズマブ前治療歴のないラパチニブ治療患者では、トラスツズマブ治療患者よりも、入院が多く(IRR 1.74、p=0.002)、医療サービス費が高かった(p<0.001)。