BMI高値は乳癌の転帰に関連する重要な因子と考えられることから、欧米ではさまざまな検討が行われている。しかし、欧米と日本の乳癌患者では肥満の発生率が異なる上、日本人を対象とした検討は少ない。12月4日から8日まで米国サンアントニオで開催されたサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS2012)では、日本人の乳癌患者を対象とした検討の結果が発表された。ホルモン受容体や閉経の状態により、BMI高値・低値のいずれも予後不良因子となる可能性が、2件の結果から示された。

 神戸乳癌研究グループ(KBCOG)と北海道がんセンターが共同で行ったレトロスペクティブな検討では、ホルモン受容体陽性の肥満の患者で予後不良な傾向が示されたものの、肥満は独立した予後因子として抽出されなかった。また新たな知見として、多変量解析で有意差は示されなかったものの、ホルモン受容体陰性の患者で低体重が予後不良因子となる可能性も示唆された。淀川キリスト教病院医務部・腫瘍内科の重岡靖氏が発表した。

 重岡氏らは、2004年1月から2005年12月までに手術を行ったI-III期の原発乳癌患者1222人の臨床データ(身長、体重、BMI、ホルモン受容体、HER2、転帰)を検討した。BMIにより、低体重(18.5kg/m2未満)、正常(18.5-24.9kg/m2)、過体重(25-29.9kg/m2)、肥満(30.0kg/m2以上)の4群に患者を分類し、BMI、無再発生存期間(DFS)、全生存期間(OS)の相関を解析した。

 低体重群、正常群、過体重群、肥満群はそれぞれ92人(7.5%)、832人(68.1%)、253人(20.7%)、45人(3.7%)となり、欧米と比べて日本人では肥満群の発生率が低かった。4群の患者背景はほぼバランスがとれていたが、年齢は低体重群と正常群で有意に低く、閉経後の患者は過体重群で有意に多く、III期の患者は肥満群で有意に多かった。

 184人(15.0%)で乳癌が再発し、75人は再発による死亡、29人は他の死因による死亡、6人は死因不明だった。単変量解析では、過体重群のDFSのハザード比は0.81(95%信頼区間[CI]:0.71-0.93)、OSのハザード比も0.81(95%CI:0.70-0.93)で、正常群(参照値、いずれも1.0)より有意に低かったが(それぞれp=0.004、p=0.003)、多変量解析では、独立した予後因子としてのBMIのカテゴリーは特定されなかった。

 サブグループ解析では、ホルモン受容体陽性で肥満の患者は予後不良と考えられる生存曲線が示されたが、本検討では肥満は独立した予後因子とはならなかった。肥満群にIII期の患者が多かったことが交絡因子と考えられた。

 また、多変量解析では有意差は示されなかったが、単変量解析ではホルモン受容体陰性の低体重群のDFSのハザード比は1.45(95%CI:0.93-2.17)、OSのハザード比は1.64(95%CI:1.04-2.44)で正常群よりも高く(それぞれp=0.09、p=0.03)、予後不良因子となる可能性が示唆された。
 
 重岡氏は「本検討の結果は最近の知見とやや異なったが、日本人患者でも肥満がDFSとOSの危険因子となりうる。また過去の報告と異なる知見として、ホルモン受容体陰性の患者では低体重が予後不良因子となる可能性も示された」とした。

 一方、BMIと全死因による死亡および乳癌特異的死亡のリスクとの相関について、閉経の状態とホルモン受容体から検討した病院ベースの前向きのコホート研究からは、BMI高値と低値はいずれも死亡のリスクの上昇と相関し、特に閉経前またはホルモン受容体陽性の患者で認められたことがわかった。東北大学地域保健学の河合賢朗氏が発表した。

 河合氏らは、1997年1月から2005年12月までに宮城県立がんセンターで乳癌の診断を受け、病院ベースのがん登録に記録された患者から653人を対象とし、2008年12月まで追跡した。

 BMIにより、21.2kg/m2未満、21.2 kg/m2以上23.3 kg/m2未満(参照値)、23.3 kg/m2以上25.8 kg/m2未満、25.8 kg/m2以上の4群に分類し、それぞれ163人、166人、161人、163人となった。患者背景では、体重が多い患者ではホルモン受容体陽性が多い傾向、BMI高値の患者では年齢が高く閉経後であるなどの傾向を認めた。

 追跡期間中、136人に全死因による死亡が観察され、このうち108人は乳癌特異的死亡だった。臨床因子と交絡因子を調整すると、閉経前の患者では、BMI高値は全死因による死亡のリスクの上昇と相関し、25.8 kg/m2以上の群のハザード比は2.61(95%CI:1.01-6.78)で、21.2 kg/m2以上23.3 kg/m2未満の群(参照値、1.0)より高かった。

 ホルモン受容体の状態でみると、ホルモン受容体陽性の患者ではBMI 25.8 kg/m2以上の群は乳癌特異的死亡と相関し、ハザード比4.95(95%CI:1.05-23.35)となった。また、BMI 21.2kg/m2未満の群は全死因による死亡(ハザード比2.91、95%CI:1.09-7.77)および乳癌特異的死亡(ハザード比7.23、95%CI:1.57-33.34)と相関した。エストロゲン受容体陽性またはプロゲステロン受容体陽性で21.2 kg/m2以上の患者ではBMIと死亡のリスクに正の相関を認め、傾向分析のp値(p for trend)は、全死因による死亡で0.02、乳癌特異的死亡で0.031だった。

 河合氏は「乳癌患者には、診断後に適切な体重を維持する重要性を伝える必要がある」とコメントした。