トリプルネガティブ乳癌(ER陰性、PR陰性、HER2陰性)に対し、PI3K/AKT経路の阻害とEGFR-HER3二量体形成の阻害を併用することで、単剤よりも高い抗腫瘍効果が得られる可能性が、前臨床研究で明らかになった。米国Massachusetts General HospitalのJ. Tao氏らが、12月4日から8日まで米国サンアントニオで開催されたサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS2012)で発表した。

 トリプルネガティブ乳癌では、EGFR(HER1)過剰発現が49%程度に認められる。EGFRとHER3はヘテロ二量体を形成し、シグナル伝達経路を活性化させる。前臨床データでは抗EGFR治療薬はトリプルネガティブ乳癌に対し抗腫瘍効果があり、臨床データでも有効性が示唆されている。

 またトリプルネガティブ乳癌ではPTENの機能損失が高頻度に見られる。PTENの機能損失はPI3K/AKT経路の過剰活性をもたらす。PI3K阻害剤によってPI3K/AKT経路のシグナル伝達は阻害され、受容体型チロシンキナーゼの増加は抑制される。しかし一方でEGFRやHER3の発現が増加するといわれている。

 このため、PI3K/AKT経路の阻害およびEGFR-HER3の阻害を併用することで、トリプルネガティブ乳癌に対し、単剤よりも優れた抗腫瘍効果が期待できると考えられた。

 そこでトリプルネガティブ乳癌の細胞株に、EGFRとHER3の両方を標的とする薬剤(MEHD7945A)、AKT阻害剤(GDC0068)、pan-PI3K阻害剤(GDC0941)を投与した。

 結果、in vitroで、GDC0068とGDC0941はいずれも生存細胞数を減少させ、さらにMEHD7945Aとの併用では単剤よりも細胞増殖を抑制した。

 また、患者由来の細胞を用いたトリプルネガティブ乳癌モデルにおいて、未治療では約60日目に腫瘍サイズは14倍になるが、MEHD7945A投与で6倍、GDC0941で4倍、GDC0068では2.5倍に抑制された。MEHD7945AとGDC0068もしくはMEHD7945AとGDC0941の併用ではより効果は高かった。

 PI3K/AKTの阻害とEGFR-HER3の阻害を併用することで、in vitroでもin vivoでもより効果が示されたことから、Tao氏は「このデータは、臨床においてPI3K阻害剤とEGFR-HER3阻害剤を併用することの理論的根拠を提示している」とまとめた。