並行して行われたほぼ同じ設計の2件の臨床試験のデータを統合解析した結果は、トラスツズマブの追加が10年間の無病生存率と全生存率を有意に上昇させることを明らかにした。米Kentucky大学のEdward Romond氏がSABCS2012で12月7日に報告した。

 研究者たちは、NSABP(National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project)B-31試験と、NCCTG(North Central Cancer Treatment Group)N9831試験に登録されたHER2陽性乳癌患者のうち、術後補助化学療法としてドキソルビシンとシクロホスファミドを併用する治療の後にパクリタキセルを投与された患者(対照群)と、パクリタキセルとともにトラスツズマブを52週投与された患者(介入群)の転帰を比較した。

 これらの試験の統合解析結果が最初に報告されたのは、試験開始から2.0年の追跡となった2005年で、この時点でも、無病生存(DFS)のハザード比は0.48、全生存のハザード比は0.67で、いずれもトラスツズマブの有意な生存利益を示した。

 全生存期間に関する最終的な分析は、710人が死亡した段階で行うことになっていた。中央値8.4年間の追跡となった2012年9月15日にデータ収集を中止し、それまでのデータを対象に、主要エンドポイントを無病生存期間、2次エンドポイントを全生存期間としてintention-to-treat分析した。

 介入群の5%はトラスツズマブの投与を受けていなかった。また、対照群の20.4%が、2005年の分析結果が明らかになって以降にトラスツズマブの投与を受けていたが、これらの患者はすべて、当初割り付けられたグループの患者として分析された。

 最終的な分析対象は、介入群が2028人、対照群は2018人の計4046人になった。

 Kaplan-Meier法を用いて推定した10年無病生存率はそれぞれ73.7%と62.2%、絶対差は11.5%で、ハザード比は0.60(95%信頼区間:0.53-0.68、p<0.0001)になった。

 初回のDFSイベントが遠隔再発だった患者と局所再発だった患者は、介入群のほうが少なかった。一方、対側の乳房の疾患、二次原発癌を発症、再発なしの死亡は両群に同様に発生していた。

 エストロゲン受容体(ER)陽性でプロゲステロン受容体(PR)も陽性、またはこれらのいずれかが陽性の女性に限定して、初回DFSイベントとして遠隔再発を経験した人々の割合を比較したところ、時間経過とともに介入群と対照群の差は開いていき、10年時点の絶対差は9.6%になった。ER陰性でPRも陰性の患者群では、7年以降遠隔再発の増加は見られなかったが、10年時点の両群の絶対差はやはり9.6%だった。

 次に、全生存に関する分析を実施。704人(介入群286人、対照群418人)が死亡しており、Kaplan-Meier法を用いて推定した10年生存率はそれぞれ84.0%と75.2%で、絶対差は8.8%になった。ハザード比は0.63(95%信頼区間:0.54-0.73、p<0.0001)だった。

 両群の全死因死亡率の絶対差は、4年時が2.9%、6年時は5.5%、8年が7.6%だった。

 死因別に死者数を比較すると、乳癌死亡は介入群の10.3%、対照群の16.8%で、トラスツズマブによる乳癌死亡リスク低減が示唆された。二次原発癌による死亡、他の原因による死亡、死因不明の患者の割合には大きな差は無かった。

 サブグループ解析を実施したところ、年齢、ホルモン受容体の発現状況、腫瘍の大きさ、リンパ節転移の数などにかかわらず、トラスツズマブ追加による生存利益は一貫していた。対照群と介入群の10年全生存率の差がより大きかったのは、60歳以上(両群の生存率の差は13.7%)、リンパ節転移が10個以上(差は15.6%)、腫瘍のサイズが5.0cm超(差は14.8%)などの患者だった。

 得られたデータは、ハイリスクのHER2陽性患者において、トラスツズマブ追加は10年無病生存率と全生存率を有意に高めることを示した。