HER2遺伝子増幅がない乳癌においてHER2体細胞変異の活性化が認められることが、乳癌ゲノムシークエンスの研究で確認され、HER2体細胞変異は乳癌治療のよいターゲットとなる可能性が示された。またラパチニブ抵抗性を示す変異型に対して、不可逆的Pan-ErbB受容体チロシンキナーゼ阻害剤neratinibは効果を示すことも示唆された。米国Washington University School of MedicineのRon Bose氏らが、12月4日から8日まで開催されたサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS2012)で発表した。

 8つの乳癌ゲノムシークエンス研究(患者数1499人)のデータにおいて、HER2遺伝子増幅がない乳癌で、HER2体細胞変異が見られたのは25人。通常のHER2検査では陰性になった患者だった。患者の20%は細胞外領域にあるアミノ酸309-310(エクソン8)に変異があり、68%はキナーゼ領域にあるアミノ酸755-781(エクソン19-20)に変異があった。

 癌ゲノムアトラス(The Cancer Genome Atlas:TCGA)研究の患者において、HER2体細胞変異のある細胞(V777L、V842lなど)で、HER2遺伝子コピー数が少ないことを確認。さらにin vitroで、HER2体細胞変異のある細胞(V777L、V842l、D769H)は、野生型に比べ、キナーゼ活性が顕著に高いことが示された。

 次に、ラパチニブへの感受性を見た結果、HER2体細胞変異のうち、V777Lを有する細胞はラパチニブによりリン酸化HER2の発現が低下するなど、ラパチニブへの感受性を示した。一方、L755Sを有する細胞はラパチニブ抵抗性を示したが、neratinibには感受性を示すことが確認された。

 またin vivoで、G309AやV777L、D769Hなどの変異は、野生型に比べ、腫瘍量が大きくなることが確認された。しかし腫瘍細胞増殖に対し、neratinibは野生型だけでなく、変異型に対しても、ラパチニブよりも低いIC50を示した。

 これらの結果を踏まえ、HER2遺伝子増幅がないステージ4乳癌で、HER2変異陽性の乳癌患者を対象に、neratinibを投与するフェーズ2試験が進められている。

 以上の結果から、「HER2体細胞変異は乳癌において、癌化を引き起こすdriver eventである」とし、すべてのHER2体細胞変異に対してneratinibは有望であるとした。