ラパチニブによるHER2阻害は、エストロゲン受容体(ER)発現と活性化を促し、その結果、Bcl2の発現を増加させることが明らかとなった。HER2陽性乳癌患者に対するラパチニブ術前補助療法のフェーズ2試験の解析で示されたもの。またラパチニブ抵抗性を克服するため、HER2陽性ER陽性乳癌には抗HER治療とホルモン療法の併用が重要であることも示唆された。米国Lester and Sue Smith Breast Center, Baylor College of MedicineのM. Giuliano氏らが、12月4日から8日まで開催されたサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS2012)で発表した。

 HER2陽性の腫瘍細胞では、抗HER2治療によって、PI3K/AKT/Ras/MAPK経路が阻害され、細胞の増殖、生存が阻害される。一方で、HER経路の再活性あるいは別の経路の活性化によって、抗HER2治療に抵抗性となる場合がある。前臨床データでは、この別の経路として、エストロゲン受容体(ER)が関与することが示されている。さらにERは、アポトーシス抑制活性を持つBcl2の発現を増加させることで、腫瘍細胞は生存し、治療抵抗性になると考えられている。

 そこでHER2陽性乳癌患者において、HER1/2チロシンキナーゼ阻害剤ラパチニブの術前補助療法によるERとBcl2の発現増加、ならびにラパチニブ抵抗性細胞におけるBcl2阻害の効果が検討された。

 HER2陽性乳癌患者を対象とした術前補助療法のフェーズ2試験では、ラパチニブ1500mg/日を6週間投与し、続いてトラスツズマブとドセタキセルを12週間投与した後に、手術を行った。

 腫瘍検体はベースライン、治療2週で採取され、Bcl2、ER、プロゲステロン受容体(PR)、HER2総発現量(t-HER2)、リン酸化HER2(p-HER2)、Ki67の発現が免疫組織化学法で調べられた。

 ベースラインにおいて、腫瘍検体49例のうちBcl2とERが評価できたのは35例(71%)。このうち12例(34%)はER陽性(Allred score≧3)、23例(66%)はER陰性だった。

 ベースラインでのER発現と他のバイオマーカーとの関連性を見た結果、ER発現はPRと正の相関(p=0.004)、Bcl2と正の相関(p<0.0001)を示し、t-HER2およびp-HER2とは負の相関(p=0.0005、p=0.028)、Ki67とも負の相関(p=0.027)を示した。またベースラインでのBcl2発現は、PRと正の相関(p=0.0015)、t-HER2と負の相関(p=0.0097)を示した。

 ベースラインおよび治療2週時点で、Bcl2とERが評価できたのは23例で、このうちベースライン時点でER陽性は6例(26%)、ER陰性は17例(74%)だった。しかしER陰性の3人は2週後、ラパチニブ治療によりER陽性となっていた。

 2週時点でER陽性9例のうち8例ではBcl2は増加したが、ER陰性の14例でBcl2が増加したのは1例のみだった(p=0.0147)。2週時点のBcl2発現レベルの変化は、ERとPRにおける変化と正の相関(p=0.0002、p=0.0076)を示した。

 次に、Bcl2に対する阻害剤であるABT-737を、ラパチニブ抵抗性を示す細胞に投与したところ、腫瘍細胞の増殖が抑制されることが確認された。また抗エストロゲン剤のFulvestrantを併用した場合、さらに増殖が抑制された。このためラパチニブ抵抗性を克服するには、ERを完全に阻害する必要があるとした。

 以上のことから、HER2陽性ER陽性乳癌には抗HER治療とホルモン療法の併用が重要であること、さらにHER2陽性ER陰性乳癌ではラパチニブによりERが再発現することがあり、このため再生検は必要であり、ER陽性であればホルモン療法を加える必要があるとした。