局所進行または転移を有する乳癌患者に対し、早い治療ラインでエリブリンカペシタビンを比較した第3相試験から、エリブリンは主要評価項目である全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)で優越性を示すことができなかった。ただし、トリプルネガティブの患者ではOSを5カ月延長し、特定のサブグループでは大きな有用性を示す可能性も示された。12月4日から8日まで米国サンアントニオで開催されたサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS2012)で、米国Norris Cotton Cancer CenterのPeter A.Kaufman氏が発表した。

 転移を有する乳癌で治療歴がある患者を対象としたEMBRACE試験では、治験担当医師が選択した治療と比べてエリブリンはOSを有意に延長した。

 Kaufman氏らは、局所進行または転移を有する乳癌患者を対象に、早い治療ラインでエリブリンとカペシタビンを比較する非盲検、多施設共同のランダム化試験を実施した。

 対象は、3レジメン以下の化学療法を受けた患者で、アントラサイクリンとタキサンの投与を術前・術後補助療法、あるいは局所進行性または転移を有する乳癌の治療で受けていることとした。

 21日を1サイクルとして、エリブリン1.4mg/m2を1日目と8日目に投与する群(エリブリン群)、またはカペシタビン1250mg/m2を1日2回、1日目から14日目まで投与する群(カペシタビン群)のいずれかに、患者を1対1で割り付けた。主要評価項目はOSとPFS、副次的評価項目は奏効率、QOL、安全性などだった。

 1102人が登録され、エリブリン群554人(年齢中央値54.0歳)、カペシタビン群548人(同53.0歳)となった。患者背景はバランスがとれており、エリブリン群とカペシタビン群において、試験治療がファーストライン治療となる患者はそれぞれ21%と19%、セカンドライン治療となるのは50%と53%、サードライン治療となるのは28%と27%だった。内臓転移を有する患者はそれぞれ84%と88%だった。トリプルネガティブの患者は、エリブリン群に27%、カペシタビン群に25%含まれた。

 OS中央値は、エリブリン群15.9カ月、カペシタビン群14.5カ月で、ハザード比は0.879(95%信頼区間:0.770-1.003)となり、エリブリン群でやや良好だったものの、有意差は得られなかった(p=0.056)。1、2、3年生存率でも有意差は認められなかった。

 独立審査委員会の判定によるPFS中央値は、エリブリン群4.1カ月、カペシタビン群4.2カ月、ハザード比は1.079(95%信頼区間:0.932-1.250)だった(p=0.305)。

 独立審査委員会の判定による奏効率は、エリブリン群11%、カぺシタビン群12%だった(p=0.849)。

 有害事象は両剤で既知のプロファイルと一致していた。重篤な有害事象(SAE)の発現は、エリブリン群17.5%、カペシタビン群21.1%だった。致命的な有害事象の発現はそれぞれ4.8%と6.6%で、このうち治療に関連すると報告されたのは0.9%と0.7%だった。グレード3以上の好中球減少はエリブリン群49%、カペシタビン群4%に発現したが、エリブリン群のグレード3以上の発熱性好中球減少は2%のみだった。また、グレード3以上の手足症候群はカペシタビン群のみに発現(14%)し、下痢はそれぞれ1%と5%だった。全グレードの末梢神経障害はエリブリン群13%、カペシタビン7%だった。

 予定されていた探索的な解析では、特定のサブグループでエリブリンの有用性が示された。特にトリプルネガティブの患者のOSは、エリブリン群14.4カ月、カペシタビン群9.4カ月で5カ月の差がみられ、ハザード比0.702(95%信頼区間:0.545-0.906)となった。エストロゲン受容体陰性の患者ではハザード比0.779(95%信頼区間:0.635-0.955)、HER2陰性の患者ではハザード比0.838(95%信頼区間:0.715-0.983)となった。

 エーザイの担当者によると「サードラインだけでなく広く使われているカペシタビンに優越性は示せなかったが、同等の効果は認められた。今回の結果を欧州でのセカンドラインとしての申請に利用できないか検討している。また、トリプルネガティブを標的とした開発も考えている」と語った。