乳癌の再発リスクは分子的、臨床的危険因子のプロファイルによって異なる。先頃欧州で承認を得た、遺伝子発現シグネチャに基づく予後予測ツールEndoPredict(EP)が、診断から5年を過ぎた患者に発生する遅発性の遠隔再発のリスクを予測できるかどうか調べたオーストリアVienna医科大学などの研究者たちは、EPスコアに基づいて低リスクと判断された患者の遅発性遠隔転移リスクは低いこと、予測精度は、リンパ節転移の有無、腫瘍の大きさをEPと組み合わせたEP-clinが、他の既知の予測因子のどれよりも高いことを示した。Vienna医科大学のPeter Dubsky氏がSABCS2012で12月6日に報告した。

 エストロゲン受容体(ER)陽性の乳癌患者では、陰性の患者と異なり、診断から5年以降も再発(遅発性再発)リスクが高い状態が持続する。これまでに行われた臨床試験のデータは、遅発性再発の予測因子は、リンパ節転移の有無と腫瘍の大きさであることを示唆していた。遺伝子シグネチャについては、早期転移の予測において有効であることが示されていたが、遅発性再発予測における有用性は明らかではなかった。

 研究者たちは、先頃欧州で市販許可を得、現在ドイツ、オーストリア、スイスで使用されているEP遺伝子発現検査に注目した。この検査を構成するのは、増殖関連遺伝子3つ(BIRC5、UBE2C、DHCR7)とER信号伝達/分化関連遺伝子5つ(RBBP8、IL6ST、AZGP1、MGP、STC2)、そして、参照遺伝子3つ(CVALM2、OAZ1、RPL37A)の計12遺伝子。EPは、ホルマリン固定パラフィン包埋標本からRNAを抽出、定量的RT-PCRにより12遺伝子の発現プロファイルを調べて0-15のスコアで表す予後予測指標で、現在は、ER陽性患者のうち、ホルモン療法のみでも良好な転帰が得られる集団を選出する目的に用いられている。

 今回の研究の目的は、EPがER陽性/HER2陰性乳癌患者の遅発性転移を予測できるかどうかを調べ、腫瘍の大きさ、リンパ節転移の有無という臨床危険因子と組み合わせたEP-clinがさらに高い予測精度を達成できるかどうかを調べることにあった。さらに、EPを構成する増殖関連遺伝子とER信号伝達/分化関連遺伝子の、早期遠隔再発と遅発性遠隔再発予測に果たす役割の評価も目ざした。

 対象としたのはABCSG-6試験のタモキシフェン単剤投与群と、ABCSG-8試験でタモキシフェンを5年間投与された患者、およびタモキシフェンを2年間投与後にアナストロゾールを3年間投与された患者。すべてER陽性でHER2陰性、ホルモン療法のみを術後に受けた閉経女性だった。

 1702人をEPスコアに基づいてリスク層別化(高リスクまたは低リスク)し、Kaplan-Meier法を用いて、両群の早期(0-5年)遠隔再発と遅発性(5-10年)遠隔再発の発生率を推定した。

 49%の患者が低リスクに分類された。Kaplan-Meier分析の結果は、低リスク群の臨床転帰は0-5年、5-10年の両方で有意に良好であることを示した。低リスク群と比較した高リスク群の遠隔再発のハザード比は、0-5年が2.80(1.81-4.34)、5-10年では2.91(1.98-4.27)になった。低リスク群の96.3%は10年後の時点でも遠隔再発無しの状態を維持していた。

 年齢、グレード、リンパ節転移の有無、腫瘍の大きさ、Ki67発現レベルで調整して多変量解析を行っても結果は有意だった。調整ハザード比は0-5年が1.20(1.10-1.31、p<0.0001)、5-10年が1.28(1.10-1.48、p=0.001)。

 多変量解析では、リンパ節転移陽性も、短期的、また長期的な遠隔再発に有意な影響を及ぼすことが示された(調整ハザード比は0-5年が2.15、1.67-2.77、p<0.001、5-10年は2.45、1.58-3.81、p<0.001)。一方、腫瘍の大きさやKi67、グレードは遅発性遠隔再発の予測因子ではなかった。

 EP-clinは、EPスコアより高い予測精度を示した。低リスクに分類された全体の64%の患者のうち、98.2%は10年時点でも遠隔再発無しを維持していた。

 EP-clinの遅発性遠隔再発予測精度は、Adjuvant Online(術後の再発リスクを予測するインターネット・ツール)を含む臨床的なパラメータの全てに優る遅発性再発予測能力を持っていた。

 EPを構成する遺伝子の中で、増殖関連遺伝子群は0-5年の遠隔再発の独立した予測因子(多変量調整ハザード比は1.60、1.33-1.92、p<0.001、負の予測因子)であり、ER信号伝達/分化関連遺伝子群は5年超の遠隔再発の独立した予測因子(0.61、0.46-0.81、p<0.001、正の予測因子)であることも明らかになった。

 EP-clinのような高い精度を持つ予測ツールは、個々の患者に対する治療の選択を容易にすると期待される。