日本人のHER2陽性乳癌に対する術前化学療法は、TCH療法を先に行うと、FEC100療法を先に行う場合と比べて、効果は同等で循環器毒性は少なくなる可能性が明らかとなった。フェーズ2試験JBCRG-10の結果示されたもの。12月4日から8日まで開催されているサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS2012)で、国立病院機構大阪医療センターの増田慎三氏によって発表された。

 TCH療法は3週おきにドセタキセル75mg/m2とシクロホスファミド600mg/m2、トラスツズマブを毎週2mg/kg(初回は4mg/kg)か3週おきに6mg/kg(初回は8mg/kg)投与する。FEC100療法は5-FU 500mg/m2、エピルビシン100mg/m2、シクロホスファミド500mg/m2を3週間おきに投与する。

 JBCRG-10試験は、日本人のHER2陽性手術可能乳癌患者を対象に、術前化学療法の効果を高め循環器毒性を低減させるため、TCH療法とアントラサイクリン系の抗癌剤を含むFEC100療法との順番、FEC100療法の必要性について前向きに検証した。適格条件は20歳から70歳で、T1c-3N0-1M0、T≦7cm以下などとした。

 2009年9月から2011年9月までに、全体で103人の患者が登録された。FEC100療法を4サイクル、TCH療法を4サイクル受けてから手術をする群(FEC-TCH群、21人)、TCH療法を4サイクル、FEC100療法を4サイクル受けてから手術する群(TCH−FEC群、22人)、TCH療法のみを6サイクル行ってから手術を行う群(TCH1群、24人)に無作為に割り付けた。さらにHER2陽性手術可能乳癌患者にTCH療法のみを6サイクル行ってから手術を行う群(TCH2群、36人)を加えた。

 少なくとも1回の投薬を受け、安全性評価可能だったのが103人、術前化学療法を予定通り受け臨床効果が評価可能だったのは101人、手術を受け病理学的な評価が可能だったのは94人だった。

 試験の結果、pCRが得られたのは、FEC-TCH群が42%(19人中8人)、TCH−FEC群が36%(22人中8人)、TCH1群が54%(24人中13人)、TCH1群とTCH2群を合わせたTCH群が46%(60人中27人)だった。pCRとpN0の両方が得られたのは、FEC-TCH群が37%(19人中7人)、TCH−FEC群が36%(22人中8人)、TCH1群が54%(24人中13人)、TCH群が42%(59人中25人)だった。FEC-TCH、TCH−FEC、TCHのいずれでも十分な効果が得られていた。

 間質性肺炎が6例起こり、FEC-TCH群の1人が死亡したが、それ以外の新たな安全性の問題は見出されなかった。

 左室駆出分画率(LVEF)は、FEC-TCH群はベースラインが71%、4サイクル終了時点で70%、術前療法終了後で66%、TCH−FEC群はベースラインが72%、4サイクル終了時点で70%、術前療法終了後で70%、TCH群はベースラインが70%、4サイクル終了時点で68%、術前療法終了後で70%と、TCHを先に行う場合の方が左室駆出分画率の低下を防げていた。

 増田氏は「症例数が少ないことから、順番を結論づけることはできないが、LVEFの結果より、TCH−FECまたはTCHを行う方が良いことが示唆される」と語った。

【訂正】2013年7月24日に以下の訂正を行いました。
本記事中、TCH療法は「3週おきにドセタキセル75mg/m2とシクロホスファミド500mg/m2、トラスツズマブを毎週2mg/kg(初回は4mg/kg)か3週おきに6mg/kg(初回は8mg/kg)投与する。」とありましたが、シクロホスファミドの用量に誤りがあり、正しくは600mg/m2でした。お詫びして訂正します。本文は訂正済みです。