日本の乳癌患者において、治療開始から5年後の骨関連イベント(SRE)の無発症率に影響を与える有意な因子を検討した結果、ステージとリンパ節転移個数が抽出された。一方、腫瘍サブタイプは無発症率に影響を与える有意な因子ではなかった。呉医療センター乳腺外科の山城大泰氏が、米国サンアントニオで12月4日から開催されているサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS)で発表した。 

 SREは患者のQOLを下げることから、癌治療においてはSREへの対策が欠かせない。今回、山城氏らは、日本の乳癌患者を対象に、SREや骨転移の無発症期間、生存期間に影響を与える因子を検討した。

 対象は、国内21施設において、2003年から2005年に診断された、リンパ節転移陰性または陽性の再発リスクが中間リスクから高リスクの原発乳癌患者1708人。

 主要評価項目は、無SRE期間、副次評価項目は無骨転移期間、無再発生存期間(RFS)、全生存期間(OS)に設定した。エンドポイントに影響を与えた因子については、ステージIVを除外して解析した。無発症期間の定義は、初治療から最初のイベントまでの期間とし、無再発生存期間は、初治療から最初のイベントまたは死亡までの期間とした。

 患者背景は、閉経前患者が22.5%、閉経後患者が58.9%、ステージはT1が36.4%、T2が48.4%、N0が49.1%、N1が39.4%、転移なしが93.7%。TNMステージはIが19.7%、IIが56.4%、IIIが15.6%、IVが2.3%。エストロゲン受容体(ER)陽性は64.3%、プロゲステロン受容体(PgR)陽性は52.2%、HER2陰性は61.4%。腫瘍のサブタイプは、luminal Aが24.9%、luminal Bが6.9%、luminal HER2が6.3%、HER2が10.1%、トリプルネガティブが17.4%だった。

 解析の結果、5年無SRE率は92.6%、5年無骨転移率は89.2%、5年OS率は89.4%だった。

 多変量解析により、無SRE期間の有意な因子を検討したところ、リンパ節転移個数(ハザード比1.09、95%信頼区間1.042-1.143)、臨床ステージ(ステージIIのハザード比4.54、95%信頼区間:1.296-15.933、ステージIIIのハザード比7.36、95%信頼区間:1.717-31.593)が抽出された。

 リンパ節転移個数、ステージは、無SRE率、無SRE生存率、無骨転移率、無骨転移生存率、無再発生存率、全生存率の有意な相関因子だった。そのほか、BMIは、無骨転移率、無骨転移生存率、無再発生存率の有意な因子だった。

 腫瘍サブタイプ別に各エンドポイントのハザード比(Luminal Aを基準とした)を解析したところ、無SRE生存率、無骨転移率、無骨転移生存率、無再発生存率、全生存率は、腫瘍サブタイプごとに有意に異なっていた。一方、無SRE率は、腫瘍サブタイプの違いによる有意な差はなかった。

 無SRE率のハザード比は、luminal Bが1.89、luminal HER2が2.81、HER2が2.68、トリプルネガティブが5.38、無骨転移率はそれぞれ2.05、2.58、3.04、2.59、無骨転移生存率は2.23、3.10、2.75、5.02。無再発生存率のハザード比はluminal Bが2.68、luminal HER2が3.54、HER2が5.46、トリプルネガティブが5.40、全生存率はそれぞれ2.26、3.58、4.22、10.05だった。

 山城氏は今回の結果を踏まえ、「ステージとリンパ節転移個数は、無SRE率に影響を与える有意な因子だったが、腫瘍サブタイプは無SRE率に影響を与えないことが示された。今回の結果は、実臨床での印象と一致するものだった」と語った。

 山城氏は、今回のデータは2005年までのもので、トラスツズマブを投与したHER2陽性患者は3分の1にとどまっていたことに触れ、「トラスツズマブの登場でHER2陽性患者の予後が大きく改善している。トラスツズマブがより臨床現場で使用されるようになった2006年以降のデータでは異なる結果が出ることが予想される。今後は2006年以降のデータについても解析し、SREや骨転移に影響を与える因子をさらに検討したい。今回のデータは、その際の基本データとなる」と補足した。