繰り返し行った内分泌療法が無効となったER陽性の閉経後乳癌患者に対し、低用量エストロゲンを投与した結果、18人中9人で部分奏効(PR)が確認され、その効果は半年以上継続したことが報告された。PRとなった患者は、原発巣や転移巣でERが高発現しており、前治療で行った内分泌療法で反応を示した患者だった。フェーズ2試験EFSET Trialの結果によるもので、熊本大学乳腺内分泌外科の岩瀬弘敬氏が、米国サンアントニオで12月4日から開催されているサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS)で発表した。

 アロマターゼ阻害薬(AI)や選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM)、選択的エストロゲン受容体抑制薬(SERD)などを用いたエストロゲン枯渇療法は、閉経後のホルモン依存性乳癌患者において標準療法となっている。また、低用量のエストラジオールによる治療が、長期間エストロゲン枯渇療法を行った閉経後乳癌患者において有用であることが報告されている。

 そこで岩瀬氏らは、繰り返した内分泌療法に抵抗性となった閉経後の進行または再発乳癌患者を対象に、低用量エチニルエストラジオール(EE2)を投与した際の有効性と安全性を検討するフェーズ2試験を実施した。

 主要評価項目は、臨床的有効率(CBR:完全奏効[CR]+部分奏効[PR]+長期間の不変[NC])、副次評価項目は、安全性、奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、治療成功期間(TTF)、全生存期間(OS)。

 対象は、SERMかつ/またはAIによる内分泌療法を繰り返し行い、無効となったエストロゲン(ER)受容体陽性かつHER2陰性の閉経後進行または再発乳癌患者18人。2010年10月から2012年5月までに登録した。1日3mgのEE2を投与し、EE2投与に反応性を示した患者では、前治療のAIまたはSERDによる治療を繰り返し行うこととした。追跡期間中央値は24週間(0〜60週間)。

 試験の結果、9人において部分奏効(PR)が確認された。長期間の不変(NC)は1人、安定(SD)は3人、病勢進行(PD)は2人だった。

 PRが確認された患者(4人は現在も試験進行中)においては、低用量エストラジオール投与の効果が23〜60週間確認された。これらのPR患者は、原発巣または転移巣でERが高発現していたほか、転移後の内分泌療法を長期間行っている、または前治療でAIによる治療に反応を示していた。

 EE2投与中止までの期間中央値は10.6カ月(0〜60週)で、うち3人は開始1週間以内に、悪心、倦怠感、発熱などの内分泌関連症状が発現し、試験脱落となった。PRや長期間のNCなど、EE2投与による効果が確認された期間中央値は12.0カ月(25〜60週間)だった。EE2投与に反応性を示した患者の4分の1は、その後に行ったAI治療に反応を示した。

 全てのグレードの主な有害事象は、乳頭・乳輪の色素沈着(13人)、子宮内膜肥厚・子宮頸部膨大(13人)、嘔気・嘔吐(11人)など。グレード2は、膣分泌物・出血(5人)、嘔気・嘔吐(3人)、体重増加(1人)で、グレード3以上の有害事象はなかった。

 平均血清エストラジオール濃度は、開始前が12.3pg/mLだったのに対し、投与開始4週間後は45.4pg/mLまで上昇した。また、卵胞刺激ホルモン(FSH)濃度は閉経前レベルまで減少した。

 これらの結果から岩瀬氏は、「1日3mgを投与する低用量エストロゲン療法は、繰り返した内分泌療法に無効となった閉経後の進行または再発乳癌患者に有用である可能性が示された。ERが高発現し、前治療の内分泌療法で反応を示した患者は、この低用量エストロゲン療法が有効である可能性が示唆される」と語った。また、低用量エストロゲン療法の作用メカニズムについては、エストロゲンがアポトーシスを誘導するためであると推測している。

 今後は、同フェーズ2試験の登録を継続し、およそ60症例の登録を目指す方針。多施設による実施も検討しているほか、腫瘍や血液サンプルを積極的に保存し、低用量エストロゲン療法が有効な患者を予測するための因子を検討したいとしている。