エストロゲン受容体(ER)陽性早期乳癌の術後補助療法として10年間タモキシフェンを投与することは、5年間タモキシフェンを投与する場合に比べて、長期間の再発、死亡のリスクを減少させることが明らかとなった。国際的な臨床試験ATLAS(Adjuvant Tamoxifen--Longer Against Shorter)の結果示されたもの。12月4日から8日まで開催されているサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS2012)で、英University of OxfordのChristina Davies氏によって発表された。

 現在、ER陽性早期乳癌の術後補助療法の標準療法とされているタモキシフェンの5年間投与は、投与しない場合に比べて術後15年間を通じて再発を抑制し、乳癌死を減らすことが既に報告されている。ATLAS試験は、タモキシフェンを10年間投与した場合の効果を5年間投与と比較するために実施された。

 1996年から2005年の間に6846人のER陽性患者を、術後補助療法としてタモキシフェン投与を5年間で止める群(5年群)とさらに5年間続けて投与する群(10年群)に無作為に割り付けた。

 患者の居住地は25%がアジア/中東、28%がラテンアメリカ、4%が欧州/米国/オーストラリア・ニュージーランド/南アフリカだった。患者の54%はリンパ節転移陰性。観察期間中央値8年でコンプライアンス、乳癌再発(新規の対側乳癌を含む)、死亡についてフォローアップを行った。

 10年群は5年群に比べて、再発、乳癌死、全死亡のいずれにおいても有意に少なかった。再発は10年群で617件、5年群で711件発生した(両側確率2p=0.002)。乳癌死は10年群で331件、5年群で397件発生し(2p=0.01)、全死亡は10年群で639件、5年群で722件発生した(2p=0.01)。

 再発、乳癌死に対する効果は、術後5年から9年の期間は効果の差はほとんどなかったが、10年以上で主に10年投与の効果が発揮された。再発は5年から9年ではレート比は0.90(95%信頼区間:0.79-1.02)だったが、10年以上は0.75(95%信頼区間:0.62-0.90)となった。10年時点の再発率は5年群が14.5%、10年群が13.1%、15年時点の再発率は5年群が25.1%、10年群が21.4%だった。

 乳癌死は5年から9年ではレート比は0.97(95%信頼区間:0.79-1.18)だったが、10年以上は0.71(95%信頼区間:0.58-0.88)となった。10年時点の乳癌死亡率は5年群が6.0%、10年群が5.8%、15年時点の乳癌死亡率は5年群が15.0%、10年群が12.2%だった。

 タモキシフェン10年間投与と投与なしの場合を見積もると、レート比は0年から4年で0.71(95%信頼区間:0.62-0.81)、5年から9年で0.64(95%信頼区間:0.50-0.82)、10年以上で0.52(95%信頼区間:0.40-0.68)となった。

 ATLAS試験の服薬コンプライアンスは、2年後で10年群の84%が継続し、4%が投薬を中止した。

 15年死亡率を、5年間タモキシフェン投与群と無投与群のメタアナリシスと、ATLAS試験で見積もると、メタアナリシスではタモキシフェン5年間投与は、無投与に比べて乳癌死を9%抑制するが、子宮内膜癌などで0.2%増加、ATLAS試験ではタモキシフェン10年間投与は、5年間投与に比べて乳癌死を3%抑制するが、子宮内膜癌などで0.2%増加するという結果となった。

 タモキシフェン10年間投与と無投与で15年死亡率を見積もると、タモキシフェン10年間投与は、無投与に比べて乳癌死を12%抑制するが、子宮内膜癌などで0.4%増加するとなった。これより子宮内膜癌などによる死亡増加率の30倍の乳癌死抑制効果が得られるとした。