乳癌において中枢神経系(CNS)転移の頻度は10-20%と言われているが、早期に発見し、定位放射線療法やラパチニブを投与することによって予後が改善することが9年間のフォローアップで明らかになった。静岡がんセンター女性内科の渡邉純一郎氏らが、12月6日から10日に米国サンアントニオで開催されたサンアントニオ乳癌シンポジウム2011で発表した。

 渡邉氏らは、CNS転移のある乳癌の予後因子やCNS転移の早期発見による有用性を評価するため、転移性乳癌患者459人を対象に解析した。CNS転移のある患者は153人(33.3%)だった。このうちエストロゲン受容体陽性は49.7%、HER2陽性は39.2%、トリプルネガティブは13.1%、CNS転移による症状があった症候性CNS転移患者は44.4%だった。

 9年間のフォローアップで、153人のうち132人が放射線療法や手術を受けており、21人は支持療法(BSC)を受けていた。定位放射線治療は25人に行われ、ラパチニブは20人に投与されていた。9年間で136人が死亡し、CNSによる死亡が40人、呼吸不全が41人、悪液質が25人、肝不全が20人、感染症が5人、その他が5人であった。

 転移性乳癌診断からの全生存期間中央値(MST)は1376日だった。CNS転移のある患者のMSTは1071日、転移のない患者では1695日だった(p<0.0001)。CNS転移患者のうち、HER2陽性患者のMSTは1279日、HER2陰性患者では947日だった(p=0.13)。ラパチニブの投与で分けると、投与した患者のMSTは1982日、投与しなかった患者は1027日で有意な違いがあった(p=0.0004)。

 次に、CNS転移からのMSTは318日。HER2陽性患者では500日、HER2陰性患者では208日で、HER2陽性患者の方が良好だった(p=0.0001)。ラパチニブの有無では、投与した患者のMSTは844日、投与しなかった患者は428日だった(p=0.0155)。またCNS転移の症状の有無では、症候性CNS転移患者のMSTは237日、無症候性の患者では359日(p=0.27)。定位放射線療法を受けた患者のMSTは661日で、全脳照射や手術、BSCを受けた患者の237日に比べて優れていた(p=0.002)。

 これらの結果から、渡邉氏は、「定位放射線療法は多発病変には施行できないなど適応は限定されるが、MRIを中心とする画像検査によって早期に転移病変を見つけ、定位放射線療法を行うことで予後は改善すると考える」とした。またCNS転移が現れた後もラパチニブ投与によってMSTの延長があったことから、「小さい病変であればラパチニブの効果が期待できるのかもしれない」と語った。