HER2陽性局所進行・転移乳癌患者に対し、ErbB受容体チロシンキナーゼ阻害剤のneratinib(HKI-272)は、ラパチニブとカペシタビンの併用(L+C)に無増悪生存期間(PFS)で非劣性を示すことができなかった。ただし、neratinibの忍容性は良好で、有害事象による減量や治療の中止は少なかった。この結果は、無作為化フェーズ2試験から明らかになったもので、12月6日から10日まで米国サンアントニオで開催されたサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS)で、スペインHospital Universitario Gregorio MaranonのMiguel Martin氏が発表した。

 neratinibは経口のErbB受容体チロシンキナーゼ阻害剤で、HER1、HER2、HER4を不可逆的に阻害する。単剤で進行性のHER2陽性乳癌に抗腫瘍活性を示すことが明らかになっている。一方、ラパチニブはHER1、HER2を可逆的に阻害するチロシンキナーゼ阻害剤である。

 当初この試験は、neratinibのL+Cに対する優越性を評価するフェーズ3試験だったが、登録者数の不足により、中間解析の前に、neratinibのL+Cに対する非劣性を評価し、無作為化試験の設定でneratinib単剤の有効性と忍容性の理解を深め、すでに確立された併用療法と比較するフェーズ2試験に変更された。

 対象はHER2陽性局所進行・転移乳癌患者で、neratinib 240mg/日を投与する群(neratinib群)と、21日を1サイクルとして、ラパチニブ1250mg/日を継続投与し、カペシタビン2000mg/m2/日を1〜14日まで投与する群(L+C群)に無作為に割り付けられた。

 試験の主要評価項目は無作為化からの無増悪生存期間(PFS)、副次的評価項目は奏効率、臨床的有効率(CBR:奏効+24週以上の安定状態)、全生存期間(OS)、安全性だった。

 ITT解析の対象は、neratinib群117人(年齢中央値52歳)、L+C群116人(56歳)となった。neratinib群とL+C群で、トラスツズマブが前治療の術前・術後の化学療法に含まれていたのは20%と32%、転移に対する治療に含まれていたのは79%と68%だった。

 治療継続期間の中央値は、neratinib群127.5日、L+C群203日で、減量が必要となったのはneratinib23%、ラパチニブ28%、カペシタビン70%だった

 PFS中央値は、neratinib群4.5カ月(95%信頼区間:3.1〜5.7)、L+C群6.8カ月(95%信頼区間:5.9〜8.2)で有意差はなかった(P=0.231)。しかし、ハザード比は1.19で、非劣性マージンの1.15に至らず、neratinibはL+Cに非劣性を示すことができなかった。

 OS中央値は、neratinib群で19.7カ月(95%信頼区間:18.2〜NE)、L+C群で23.6カ月(95%信頼区間:18.0〜NE)だった(P=0.280)。

 奏効率は、neratinib群29%、L+C群40%、CBRはそれぞれ44%と63%だった。

 薬剤に関連する有害事象で発現頻度が最も高かったのは下痢だった。グレード3以上の下痢は、neratinib群28%、L+C群10%に発現した。頻度は高かったが、ロペラミドの投与などで管理が可能だった。下痢の管理のため減量が必要となったのは、neratinib群12%、L+C群13%、中止が必要となったのは2%と4%だった。グレード3以上の手掌・足底発赤知覚不全(palmar-plantar erythrodysesthesia:PPE)はL+C群のみに14%発現した。

 Martin氏は、「今回の知見により、HER2陽性再発乳癌に対する治療として、単剤または他剤との併用でneratinibの開発を継続する意義が裏付けられた。ラパチニブとカペシタビンの併用と、neratinibとカペシタビンの併用を比較するフェーズ3試験が必要」と話した。