リンパ節転移陽性乳癌の術後化学療法において、タキサン系抗癌剤単独投与とAC療法(ドキソルビシン、シクロホスファミド)とタキサン系抗癌剤の順次投与の比較から、無病生存期間(DFS)でタキサン系抗癌剤単独投与の非劣性が証明された。3週毎の投与スケジュールでは、ドセタキセルがパクリタキセルを上回る有効性を示した。この結果は日本のフェーズ3臨床試験、N-SAS BC(National Surgical Adjuvant Study of Breast Cancer)02の最終解析から明らかになったもので、12月6日から10日まで米国サンアントニオで開催されたサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS)で、浜松オンコロジーセンターの渡辺亨氏が発表した。

 乳癌の術後化学療法では、4サイクルのAC療法とタキサン系抗癌剤の順次投与が広く行われている。しかし、頻度は低いものの、アントラサイクリン系抗癌剤による心不全や二次性白血病などの毒性への懸念から、同剤を含まないレジメンが検討され、ドセタキセルとパクリタキセルが使用されるようになってきている。
 
 N-SAS BC02試験では、臨床病期がI〜IIIA期の腋窩リンパ節転移陽性乳癌の患者を対象とし、以下の4群に無作為に割り付けた。4サイクルのAC療法(ドキソルビシン60mg/m2、シクロホスファミド600mg/m2を3週毎に投与)に続き、パクリタキセル(175mg/m2)を3週毎に4回投与する群(ACP群)、4サイクルのAC療法に続き、ドセタキセル(75mg/m2)を3週毎に4回投与する群(ACD群)、パクリタキセル(175mg/m2)を3週毎に8回投与する群(PTX群)、ドセタキセル(75mg/m2)を3週毎に8回投与する群(DTX群)である。
 
 渡辺氏らは同試験において次の2つの仮説をたてた。仮説1は「8サイクルのタキサン系抗癌剤による治療は、4サイクルのAC療法と4サイクルのタキサン系抗癌剤の順次投与に非劣性である」、仮説2は「タキサン系抗癌剤のいずれかが他の治療薬よりも優れる、または同等である」だった。

 パクリタキセルとドセタキセルの比較(ACP+PTX対ACD+DTX)、AC療法とAC療法を含まない治療法の比較(ACP+ACD対PTX+DTX)が行われた。主要評価項目は無病生存期間(DFS)で、副次的評価項目には全生存期間(OS)が含まれた。

 2001年12月から2006年4月までに、84施設から1060人が登録された。有効性と安全性が解析されたのは、ACP群262人、ACD群263人、PTX群263人、DTX群261人となった。
 
 DFSについて、タキサン系抗癌剤単独投与とAC療法とタキサン系抗癌剤の順次投与に差はなく(ハザード比[HR]1.19、90.3%信頼区間:1.00〜1.41、p=0.31)、仮説1が証明された。また、パクリタキセルを含む群と比較して、ドセタキセルを含む群でDFSが26%改善した(HR 0.74、95.2%信頼区間:0.60-0.91、p=0.0037)となり、仮説2も証明された。
 
 OSについても、タキサン系抗癌剤単独投与とAC療法とタキサン系抗癌剤の順次投与に差はなく(HR 1.06[90.3%信頼区間:0.83-1.36、p=0.14)、パクリタキセルを含む群と比較して、ドセタキセルを含む群でDFSが27%改善した(HR 0.73、95.2%信頼区間:0.54-0.98、p=0.035)。仮説1および2はOSでも証明された。
 
 グレード3以上の有害事象として、浮腫や有熱性の好中球減少の発現は、パクリタキセルよりもドセタキセルを含む治療で多かった。一方、感覚性の神経障害の発現は、ドセタキセルよりもパクリタキセルを含む治療で多かった。

 タキサン系抗癌剤単独投与でも十分な効果が得られる可能性が示され、渡辺氏は「8サイクルのドセタキセルによる治療は、アントラサイクリンを含む治療に耐えられない患者や抵抗感をもつ患者の選択肢となる」とした。