エストロゲン受容体(ER)とプロゲステロン受容体(PgR)、HER2が全て陰性のトリプルネガティブ乳癌(TNBC)は予後不良といわれるが、術前補助化学療法によって病理学的完全奏効(pCR)に達した患者の予後は良好であることが日本人データの解析で明らかになった。広島市民病院乳腺外科の大谷彰一郎氏らが、サンアントニオ乳癌シンポジウム2011で発表した。

 対象は、ステージ1-3乳癌で術前補助化学療法を受けた335人。このうちTNBCは21.1%だった。術前補助化学療法の効果をTNBCと非TNBCで比較したところ、臨床的な奏効率はTNBC群が80.2%、非TNBC群が81.8%だった(p=0.65)。pCR率は、TNBC群では28.1%、非TNBC群は18.9%で有意な違いはなかった(p=0.09)。

 レジメン別には、パクリタキセル週1回投与、その後FEC療法を行った場合、TNBC群のpCR率は35.8%、非TNBC群は11.7%だった(p=0.0002)。またドセタキセル投与後にFEC療法を行った場合はそれぞれ8.3%、2.3%(p=0.23)、タキサン系抗癌剤単独では両群ともpCR率は0%だった。

 術前補助化学療法後の全生存率は、TNBC群は3年生存率が87.3%、5年生存率は80.5%、非TNBC群は3年生存率が95.8%、5年生存率が87.3%で、TNBC群と非TNBC群の生存率には有意差があった(p=0.0254)。

 化学療法への反応で分けると、pCRに達した患者ではTNBCと非TNBCの生存はほぼ同等だった(p=0.15)。しかしpCRに達せず、遺残病変のあった患者では非TNBC群に比べてTNBC群では生存率は有意に低かった(p=0.01)。

 以上の結果から、術前補助化学療法後にpCRに達したTNBC患者では生存は良好だが、遺残病変のあったTNBC患者では非TNBC患者に比べて生存は不良だったとし、「日本人TNBC患者の結果は、海外で報告されたデータと一致した」と大谷氏は述べた。また「TNBCに対してはpCRを目指す治療が重要であり、術前補助化学療法として現段階では、パクリタキセル週1回投与とFEC療法が適しているのではないか」と話した。