HER2陽性切除可能乳癌に対し、化学療法とトラスツズマブラパチニブの併用による術前補助療法で、病理学的完全奏効(pCR)率は高く、治療によりリン酸化AKT(pAKT)やKi67の発現が抑制されることが、無作為化フェーズ2試験(CHER-Lob)のバイオマーカー解析で明らかになった。イタリアModena University HospitalのValentina Guarneri氏らが、サンアントニオ乳癌シンポジウム2011で発表した。

 試験は、HER2陽性ステージ2-3A乳癌患者121人を対象に、術前補助療法として、化学療法に加え、トラスツズマブを投与した群、ラパチニブを投与した群、トラスツズマブとラパチニブの2剤を投与した群を比較した。また事前にトランスレーショナル研究として、効果予測因子や治療効果のバイオマーカーの評価が計画されていた。化学療法には、週1回パクリタキセル(80mg/m2)、5-FU(600mg/m2)、エピルビシン(75mg/m2)、シクロホスファミド(600mg/m2)が使用された。

 トランスレーショナル研究では、治療前後で免疫組織化学(IHC)によってHER2、p95HER2、PTEN、pAKT、Ki67が評価された。FISH法による解析はHER2がIHCで2+の場合、ならびに中央管理施設における結果と各施設検査室の結果が一致しなかった場合に行われた。

 この結果、乳房と腋窩リンパ節における病理学的完全奏効(pCR)率は、化学療法とトラスツズマブを投与した群では26%、化学療法とラパチニブを投与した群は28%、化学療法とトラスツズマブ、ラパチニブを投与した群は44%だった。

 バイオマーカーとの関連性をみたところ、治療前のKi67、PTEN、pAKT、p95-HER2とpCRには関連性がなかった。しかしp95HER2の発現レベル80%をカットオフ値とすると、各治療群において、p95HER2高値群に比べ低値群のpCR率は高かった。

 治療前後の発現率を比べると、Ki67発現率の平均は治療前が29.6%、治療後が16.5%(p<0.0001)、pAKTはそれぞれ23.4%、8.8%(p=0.0003)で、有意差が見られた。一方、PTEN発現率は治療前が65.9%、治療後が68.5%で有意差はなかった。

 治療群別では、Ki67発現率は、トラスツズマブ群やラパチニブ群に比べ、2剤併用群での減少が有意に大きかった。このため「抗HER2療法を併用した方が、抗HER2療法の単独よりもKi67阻害作用は高い」とした。

 またpAKT発現率は、トラスツズマブ群での減少が最も大きく、「治療によってpAKT発現は抑制され、特にトラスツズマブ治療を受けた患者で顕著だった」とした。

 なお中央管理施設による再検査の結果は、各施設検査室での結果と高い整合性を示していた(97.3%)。