ラパチニブ抵抗性には、MAPKシグナル伝達経路とPI3K/AKT/mTORシグナル伝達経路が関与しており、リン酸化AKT(pAKT)、リン酸化S6K(pS6K)、リン酸化eEF2(peEF2)、リン酸化ERK(pERK)発現レベルがラパチニブ抵抗性を示すマーカーになる可能性のあることが、細胞株を用いた研究で明らかになった。アイルランドDublin City UniversityのMartina McDermott氏らが、12月6日から10日に米国サンアントニオで開催されているサンアントニオ乳癌シンポジウム2011で発表した。

 ラパチニブはHER2陽性乳癌において、腫瘍の増殖や生存に関与するMAPKシグナル伝達経路とPI3K/AKT/mTORシグナル経路を阻害することが知られている。しかし全てのHER2陽性乳癌でラパチニブの効果が示されているわけではなく、ラパチニブに対する自然(innate)抵抗性の患者も存在する。そこで研究グループは、ラパチニブ感受性または抵抗性を示すHER2増幅乳癌細胞パネルにおいて、MAPKとPI3K/AKT/mTORシグナル伝達経路の役割を調べた。

 ラパチニブに対する感受性は用量反応曲線で決定した。ラパチニブの50%阻害濃度(IC50)が1μM未満の場合を感受性あり、1μM超の場合を抵抗性とした。その結果、15細胞株のうち10細胞株でラパチニブに感受性があり、別の5細胞株では自然抵抗性が示された。

 HER2、HER3、EGFR、AKT、ERK、S6K、eEF2の発現レベルおよびリン酸化の発現レベルは、ラパチニブ投与24時間後に測定された。その結果、リン酸化HER2(pHER2)およびリン酸化HER3(pHER3)発現レベルは、ラパチニブ感受性に関係なく、ラパチニブ投与によって減少した。またHER2、HER3、EGFRの発現レベルとラパチニブ感受性には関連性がなかった。

 このため、HER2とHER3の活性化阻害はラパチニブの効果を示すものではなく、HER2とHER3、EGFRの発現レベルおよびリン酸化発現レベルもラパチニブの効果を示すものではないとした。

 一方、ラパチニブ感受性細胞において、ラパチニブ投与によって、pAKT、pS6K、pERKの発現レベルは低下した。これは、ラパチニブがそれぞれPI3K、mTOR、MAPKシグナル伝達経路を抑制することを示している。peEF2発現レベルはラパチニブによって上昇した。

 ラパチニブ抵抗性細胞では、pAKT、pS6K、peEF2、 pERK発現レベルはラパチニブを投与しても変わらなかった。

 以上のことから、ラパチニブ治療において、pAKT、pS6K、peEF2、pERK発現レベルが維持されていることは、ラパチニブ抵抗性を示すとした。またPI3K/AKT/mTORシグナル伝達経路およびMAPKシグナル伝達経路における変化は、自然抵抗性において重要な役割を果たし、薬理学的にそれらの経路をターゲットとすることがラパチニブ自然抵抗性を克服するための治療アプローチになると述べた。