HER2陽性乳癌におけるラパチニブの耐性獲得は、PI3K/AKTシグナル伝達系の活性化が原因の1つと考えられているが、ER陰性HER2陽性乳癌では、MAPKの活性化がラパチニブ耐性に関与する可能性が明らかになった。ラパチニブ耐性を克服する治療薬開発の一助となるだろう。米University of MiamiのAnna Jegg氏らが、12月8日から12日に開催されたサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS)で発表した。

 ラパチニブに対する耐性は、エストロゲン受容体(ER)αのシグナル伝達系の活性化や、PIK3CA遺伝子変異やPTEN遺伝子の損失などを介したPI3K/AKTシグナル伝達系の活性化が関与しているといわれている。ER陽性HER2陽性の細胞では、これらのメカニズムによって耐性が起こると考えられているが、ER陰性HER2陽性の細胞におけるラパチニブ耐性のメカニズムは明らかでない。

 そこで研究グループは、ER陰性HER2陽性乳癌細胞におけるラパチニブ耐性メカニズムとして、PI3K/AKTシグナル伝達系とは別の経路であるRas/Raf/MEK/MAPKシグナル伝達系などの活性化が関与していると仮定した。

 これを確かめるため、ラパチニブ耐性を示すER陰性HER2陽性細胞(SKBR3)とER陽性HER2陽性細胞(BT474)を用いて、ERαやSRC、MAPKの役割を調べた。

 ラパチニブ耐性のBT474では、ERαの発現が顕著に増加していた。ER阻害剤であるフルベストラントによってERαシグナル伝達系を阻害し、かつラパチニブを投与した結果、ラパチニブ耐性のBT474では、ラパチニブ感受性が回復し、細胞増殖の抑制や細胞死が認められた。

 一方、ラパチニブ耐性SKBR3では、ERα発現の増加は見られず、ラパチニブに加えフルベストラントを投与しても、細胞増殖への影響はなく、ERαシグナル伝達系は介さないことが確認された。またラパチニブ耐性SKBR3ではAKTの活性も見られなかった。

 SRCキナーゼは、ラパチニブ耐性SKBR3細胞で活性化していたが、SRC阻害剤であるAZD0530でSRCを阻害しても、ラパチニブ感受性は回復せず、細胞増殖抑制効果は見られなかった。

 しかし、Ras/Raf/MEK/MAPK系の下流にあるERK1/2の活性が、SKBR3ではラパチニブ投与で阻害されたが、ラパチニブ耐性SKBR3では阻害されなかった。

 次に、MEK阻害剤のU0126とラパチニブを投与した結果、ラパチニブ耐性SKBR3細胞で、細胞増殖は抑制された。

 これらのことから、「ER発現の有無によって、別々の経路を介してラパチニブ耐性は獲得される。一つはERシグナル伝達系およびAKT経路の活性であり、もう1つはAKTとは独立したMAPKの活性化を介するものと示唆された」とした。