HER2陽性乳癌に対し、ラパチニブと化学療法(アントラサイクリン系抗癌剤とタキサン系抗癌剤)の術前投与は、トラスツズマブと化学療法の術前投与に比べて、病理学的完全奏効(pCR) 率は低く、治療中止例も多いことが、フェーズ3試験のGeparQuinto試験で明らかになった。ドイツHelios KlinikumのMichael Untch氏らが、12月8日から12日に開催されたサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS)で発表した。

 HER2陽性乳癌に対して、術前補助化学療法にトラスツズマブを加えることによって、pCR率は改善すると報告されている。GeparQuinto試験はHER2陽性および陰性乳癌患者の術前補助療法を検討する試験。HER2陽性患者に対しては、術前補助化学療法にトラスツズマブもしくはラパチニブを追加し、どちらの治療がより効果的かを調べた。

 対象は、未治療のHER2陽性乳癌患者で、臨床病期T3/4、もしくはホルモン受容体(HR)陰性あるいはリンパ節転移陽性のT2、もしくはHR陰性あるいはセンチネルリンパ節転移陽性のT1の患者とした。

 治療は、EC療法(エピルビシン90mg/m2、シクロホスファミド600 mg/m2)を3週おきに4サイクル投与し、続いてドセタキセル(100mg/m2) を3週おきに4サイクル投与した。またEC療法やドセタキセルに加えて、トラスツズマブ (6mg/kg、初回は8mg/kg)もしくはラパチニブ(1000-1250 mg/日)を投与した。なお最初の60人を対象に毒性が評価されたrun-in期間で、ラパチニブが投与された患者でグレード3/4の下痢が発生した。また毒性により34.5%の患者で治療が中止されたため、ラパチニブは1250mg/日から1000mg/日に減量した。

 主要評価項目はpCR 率で、pCRは乳房および腋窩リンパ節において顕微鏡下で腫瘍細胞の遺残(浸潤性もしくは非浸潤性)がない状態と定義された。副次評価項目にはコンプライアンスと毒性、乳房温存率などが含まれている。

 EC療法とドセタキセル、トラスツズマブを投与した患者は307人(EC-Doc+T群)、EC療法とドセタキセル、ラパチニブを投与した患者は308人(EC-Doc+L群)だった。このうち治療中止は、EC-Doc+T群では10%、EC-Doc+L群は16%で、トラスツズマブのみを中止したのは3.1%、ラパチニブのみを中止したのは7%だった。

 重篤な有害事象(SAE)は感染症や出血、消化器毒性などで、EC療法とトラスツズマブ投与では42人、EC療法とラパチニブでは55人、ドセタキセルとトラスツズマブでは45人、ドセタキセルとラパチニブでは47人だった。

 pCR率は、EC-Doc+T群が31.3%、EC-Doc+L群が21.7%だった(p<0.05)。また乳房およびリンパ節に浸潤性の遺残が認められない患者はEC-Doc+T群が45.0%、EC-Doc+L群が29.9%で(p<0.05)、乳房に浸潤性の遺残がない患者はそれぞれ50.4%、35.2%だった(p<0.05)。

 また術前治療後の乳房温存率はEC-Doc+T群が65.6%、EC-Doc+L群が56%だった。

 この試験では、ラパチニブを投与した群のpCR率は低く、コンプライアンスも低い結果となった。これについてUntch氏は、「ラパチニブとトラスツズマブによる術前投与の効果を検討したNeo-ALTTO試験では、投与期間は短いが(18週)、ラパチニブが1500mg/日が投与されており、これら他の試験の結果も合わせて検討する必要がある」と述べた。