限局性前立腺癌に対する陽子線治療の成績は良好であり、有効な治療法と考えられることが、476人の患者を約7年間追跡した結果から示された。4月25日から28日まで札幌市で開催された第101回日本泌尿器科学会総会のシンポジウムにおいて、兵庫県立粒子線医療センターの不破信和氏が講演の中で発表した。

 前立腺癌に対する放射線治療としては、小線源治療と、外照射治療として通常の放射線治療であるX線治療、陽子線治療あるいは炭素線治療を用いる粒子線治療が用いられている。

 不破氏らは、同センターにおけるcT1-3N0M0前立腺癌に対する陽子線治療成績をレトロスペクティブに検討、報告した。

 同センターでは、独自のリスク分類を次のように定めている。A群:T1-T2a、PSA<20、前立腺生検陽性率(PPPB)<50%、Gleasonスコア(GS)<8、B群:T2b-T3、または20≦PSA<50、またはPPPB≧50%、またはGS≧8、C群:T因子に関わらずPSA>50、またはT4、D群:ホルモン不応性。

 このリスク分類により、A群には陽子線治療単独(左右対向、74GyE/37Fr/7.4w[2.0GyE/Fr])、B群には6カ月の照射前maximal androgen blockade(MAB)、C群には照射後1年以上のMAB(+照射前のMAB)を行うことを原則としている。D群には照射前後のMAB、化学療法が行われる。

 検討の対象は、2003年4月から2006年3月までに同センターで治療を行った476人(年齢中央値69歳)。T因子ではT2が45%を占め、GSでは7が61%を占め、初期PSAは4.1-10.0が47%を占め、それぞれ最も多かった。MSKCCリスク分類では、低リスク群106人(22%)、中リスク群179人(38%)、高リスク群191人(40%)だった。MABは320人(67%)に行われていた。

 経過観察期間中央値は82カ月だった。全例の5年および8年のPSA制御率は、それぞれ88.8%と81.4%だった。MSKCCリスク分類で予後を評価すると、5年の全生存率(OS)は低リスク群98.1%、中リスク群94.3%、高リスク群94.7%だった(p=0.122)。5年のPSA制御率はそれぞれ99.0%、90.7%、81.2%となり、有意差が認められた(p<0.0001)。

 陽子線治療による晩期障害は、グレード2の消化管障害は4.4%、グレード2の泌尿生殖器障害は2.7%に発現したのみであり、グレード3以上の事象は発現しなかった。

 PSA制御率についての単変量解析では、年齢、T因子、GS、治療前のPSA値、MSKCCリスク分類によるリスク群が独立した因子として抽出された。多変量解析では、年齢、治療前のPSA値、T因子が抽出された(それぞれp=0.002、p=0.025、p=0.007)。

 限局性前立腺癌に対する陽子線治療の長期の成績を報告した米国のRCTでは、従来の線量よりも高線量(79.2GyE)で生化学的再発が有意に低下したことが報告された(J Clin Oncol. 2010;28:1106-1111)。不破氏は「当センターでも、将来的には高リスク群に78GyEを照射することで生化学的再発をさらに低下できると考えている」と話した。

 陽子線治療の今後の課題に、照射方法がある。現在広く行われているブロードビームでは、高線量領域が発生する。しかし、日本で開発された積層原体照射、さらにスポットスキャニングでは、この問題が改善されると考えられる。また、回転ガントリなどの設備の小型化とコストの軽減、通常のブロードビームとペンシルビームスキャニングの両方が可能な高精度ビーム照射システムの実現も期待される。

 陽子線治療と最近のX線治療を比較した前向き比較試験はなかったが、低・中リスクの前立腺癌を対象とした陽子線治療と強度変調放射線治療(IMRT)の比較試験が米国で進行中である。不破氏は「今後は、術後合併症や2次癌の発生率なども考慮したうえで、ロボット手術、IMRT、陽子線治療の役割や最適な対象が議論されることになると考えられる」と話した。