MVACまたはGC療法に不応もしくは副作用のために治療継続不能な進行性膀胱癌患者を対象としたがんペプチドワクチンのフェーズ1/2試験で、良好な安全性が確認され、CTL誘導率は88.9%、病勢安定(SD)を主とした病勢コントロール率は56.3%であったことが明らかとなった。4月25日から札幌市で開催された第101回日本泌尿器科学会総会で、岩手医科大学泌尿器科学講座の小原航氏が発表した。

 現在、局所進行・遠隔転移膀胱癌の予後は悪く、新しい治療法の開発が急務となっている。開発が進められている治療法の1つにがんペプチドワクチン療法がある。

 小原氏らはこれまでに、cDNAマイクロアレイ法を用いて膀胱癌遺伝子発現解析を行い、膀胱癌細胞特異的遺伝子であるMPHOSPH1(MPH)遺伝子、DEPDC1(DEP)遺伝子を見いだした。そして、この2つの遺伝子情報を用い、HLA-A24拘束性エピトープペプチドを同定し、膀胱癌特異的に細胞を傷害するCTLを誘導することを確認した。

 次に医師主導のフェーズ1臨床研究として、標準療法不応、切除不能進行再発膀胱癌6例を対象に評価を行った結果、MPH/DEP由来ペプチド投与は安全で、6例中4例(66.7%)においてペプチド特異的CTL誘導能と抗腫瘍効果が認められた。

 そこで、これらのペプチドを用い、フェーズ1/2試験が実施された。対象はMVACまたはGC療法に不応もしくは副作用のため治療継続不能な再発、または切除不能あるいは転移性の膀胱癌患者で、HLA-A24かつPSは0-1の患者とした。目標症例数は36例とした。

 主要評価項目は、安全性、忍容性、免疫学的効果(in vitroでのCTL誘導能)で、副次評価項目として抗腫瘍効果、無増悪生存期間、全生存期間が設定された。

 ペプチドワクチンについては、週1回投与を12週間行い、その後、1〜2週間に1回(原則週1回)を継続投与するデザインで行った。4週間に1回、免疫能評価と画像評価を行った。

 抗原の発現について検討した結果、MPH、DEPもそれぞれ対象症例の97.3%、94.6%に発現していた。

 CTL誘導率を検討できた27例において、CTL誘導率は88.9%だった。ただし、CTLが誘導されたのは、ペプチド投与開始から8〜12週目であり、小原氏は「CTLが誘導されるには2〜3カ月の時間が必要と考えられる」と指摘した。

 また、投与部位に発赤や硬結、腫脹などの投与部位反応が27例中25例に認められ、この25例中24例にCTL誘導が確認された。小原氏は、「ワクチン投与による投与部位反応とCTL誘導には相関が認められる」と語った。

 抗腫瘍効果について、免疫療法に特化した評価法であるimmune-related Response Criteria(irRC)により投与した32例を評価した結果、irCRは0例、irPRは2例、irSDは16例、irPDは4例で、奏効率(irCR+irPR)は6.3%、病勢コントロール率(irCR+irPR+irSD)は56.3%だった。irRCは、免疫療法に特化した抗腫瘍効果評価法で、SDと判定する範囲が広いという特徴がある。

 これらの結果から小原氏は、化学療法後でもワクチン投与によりCTL誘導は高率に惹起されること、CTL誘導および臨床的効果を認めるには時間を要する一方、PSが低下するほど十分な免疫誘導が起きる前に病勢進行する可能性があるため進行癌の中でもできるだけ早期が良い適応であること、腫瘍縮小が必ずしも生存延長のサロゲートマーカーとはならないこと、ペプチドワクチン療法の有効性を明らかにするため、プラセボ対照比較試験が必要と指摘し、講演を締めくくった。なお、現在、今後の臨床試験について検討が進められている。