転移性腎細胞癌に対する1次治療としてのチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)投与例における予後予測因子として、治療前CRP値とMSKCCリスク分類が見い出され、予後の層別化が可能であることが示された。4月25日から札幌市で開催された第101回日本泌尿器科学会総会で、神戸大学腎泌尿器科学分野の三宅秀明氏が発表した。

 神戸大学および関連施設では多数の転移性腎細胞癌に対するTKI投与症例の経験があり、そこで今回、1次治療としてTKIを投与した転移性腎細胞癌149例を対象に、TKIの有用性を検討した。長期予後の評価を行うため、直近2年間で投与を開始した症例は除外している。

 149例の患者背景は、年齢65歳未満が45%、65歳以上が55%、男性76.5%で、腎摘除術施行例は91.9%、サイトカイン療法施行例は64.4%、診断からTKI投与までの期間が1年未満が28.2%、1年以上が71.8%だった。

 149例のうち、販売開始時期の違いによって、1次治療としてソラフェニブ投与例が94例、スニチニブ投与例が55例となっているが、この2剤間で有意な違いが認められたのは、腎摘除術施行例とサイトカイン療法施行例の割合で、腎摘除術施行例については、ソラフェニブ投与グループが96.8%だったのに対し、スニチニブ投与グループでは83.6%だった。またサイトカイン療法施行例はソラフェニブ投与グループでは83.0%だったのに対し、スニチニブ投与グループでは32.7%だった。三宅氏は、「腎摘除術を行っていない患者の割合が高いなど、スニチニブ投与グループは比較的予後が悪いと考えられる症例が多かった」とした。

 149例の病理学的因子については、淡明細胞癌が86.6%、グレード1または2が70.5%、脈管浸潤ありが57.0%、リンパ節転移ありが33.6%だった。これらの因子はソラフェニブ投与グループとスニチニブ投与グループの間で有意な差は認められなかった。

 149例の転移臓器については、肺が68.5%、肺単独転移例が29.5%、骨が20.8%、リンパ節が24.2%、肝臓が11.4%、脳が8.0%。このうち肺単独転移例が、ソラフェニブ投与グループでは42.6%だったのに対し、スニチニブ投与グループでは7.3%、骨転移例がソラフェニブ投与グループ11.7%に対し、スニチニブ投与グループは36.4%と有意な差が認められた。

 149例の生化学検査値については、Hb値正常例が38.3%、LDH値が正常値の1.5倍以内が96.0%、補正Ca正常値例が90.6%、CRP 1.0ng/mL以下が67.8%、MSKCCリスク分類でFavorable/Intermediateリスク例が87.2%だった。これらの因子はソラフェニブ投与グループとスニチニブ投与グループの間で有意な差は認められなかった。

 効果を評価した結果、149例において、完全奏効(CR)は2例(1.4%)、部分奏効(PR)が32例(21.5%)、病勢安定(SD)が99例(66.4%)、病勢進行(PD)が16例(10.7%)だった。ソラフェニブ投与グループではCRが1例(1.1%)、PRが16例(17.0%)、SDが66例(70.2%)だったのに対し、スニチニブ投与グループではCRが1例(1.8%)、PRが16例(29.1%)、SDが33例(60.0%)だった。PR以上が得られたのはスニチニブに多い傾向があり、「状態の悪い患者が多かったにもかかわらずスニチニブ投与グループにおいてPR以上が得られた割合が高かったのは注目される」と三宅氏は指摘した。

 149例の全生存期間中央値は45.2カ月だった。

 全生存率を予測する因子について検討した結果、単変量解析では多くの因子が見出され、そこから多変量解析を行った結果、有意な因子として治療前CRP値(ハザード比4.55、p=0.014)、MSKCCリスク分類(ハザード比32.26、p=0.025)が見出された。

 CRP値1.0ng/mLを閾値として2グループに分けて全生存率を比較した結果、CRP値1.0ng/mL以下(101例)と1.0ng/mL超(48例)の間で有意な差が認められた。同様にMSKCCリスク分類で2グループに分けて比較した結果、Favorable/IntermediateグループとPoorグループの間で有意な差が認められた。三宅氏は、「CRP値が高く、Poorリスクの患者への治療としてはTKIは効果が不十分ということだろう。こうした症例に対してテムシロリムスの投与が考えられるが、これらの因子がテムシロリムス投与例においても予後不良因子として見出されるかは現時点では不明だ」と語った。

 また、この2つの予測因子の保有数別に全生存期間を比較した結果、因子を1つも持たないグループ(95例)、1つ保有するグループ(41例)、2つ保有するグループ(13例)の間で有意な差が認められた。

 これらの結果から三宅氏は、「1次治療としてTKIを投与した149例の全生存期間中央値は45.2カ月と良好だった。また、CRP値とMSKCCリスク分類によりTKI投与例の予後層別化が可能だった」と締めくくった。