小径腎腫瘍に対し、待機手術療法の治療成績は即時手術療法と比較して遜色ない結果で、治療選択肢となりうると考えられることが、レトロスペクティブな検討から示された。4月25日から28日まで札幌市で開催された第101回日本泌尿器科学会総会で、近畿大学医学部泌尿器科学教室の杉本公一氏が発表した。

 杉本氏らは、小径腎腫瘍(腫瘍径:4cm以下、cT1aN0M0)に対する待機手術療法と即時手術療法の治療成績について、レトロスペクティブに検討した。待機手術療法は、画像上6カ月以上の経過観察が可能だった患者を対象とした。

 2001年1月から2011年12月までに近畿大学医学部泌尿器科学教室ならびに関連病院において、手術療法を施行した4cm以下の小径腎腫瘍(338腫瘍)の患者328人中、悪性所見を認めたのは313人だった。肉腫、他の癌腫の腎臓への転移を除いた299人中、pT1aは292人、pT3は7人だった。

 今回はpT1aN0M0の292人を対象とし、待機手術療法群は32人(年齢中央値64.3歳、男性25人)、即時手術療法群は260人(同63.7歳、187人)だった。待機手術療法群の平均観察期間は26.2カ月だった。2群間の年齢と性別に有意差はなかったが、術式は待機手術療法群では腎部分切除術、即時手術療法群では根治的腎摘除術が多く行われていた(p=0.0012)。組織分類では両群ともに淡明細胞型腎細胞癌が多く、有意差はなかった。術後の平均観察期間はそれぞれ39.7カ月と51.1カ月だった。

 待機手術療法群と即時手術療法群において、5年生存率はそれぞれ72.6%と79.3%(p=0.168)、腫瘍の非再発率は96.2%と98%(p=0.557)で、有意差を認めなかった。癌特異的生存率は待機手術療法群87.5%、即時手術療法群100%で、有意差が認められた(p=0.0002)。

 待機手術療法群において、腫瘍倍加時間は、淡明細胞型腎細胞癌ではGradeが低いほど遅い傾向がみられた。

 この検討では多くの症例で小径腎腫瘍の増殖速度が緩徐であり、観察期間中央値は46カ月だった。待機手術療法が行われたのは、他の癌腫の診断時に腎腫瘍が発見され、他の癌腫の治療が優先された患者などだった。

 杉本氏は「小径腎腫瘍に対する待機手術療法は、治療選択肢の1つとなると考えられる。今後前向きに検討する際には、他の癌腫の治療を優先した患者やリスクを有する患者を主な対象として考えたい」とした。